27.話を合わせろとか言われてますが
話を合わせろって言われても。
私にはそんな臨機応変な演技力なんてないぞ。
なんという無茶ぶり。
せめて今の間に、どういう設定なのかだけでも教えてほしいんだけどな。
おずおずと見上げると、レイは唇をきゅっとあげて、いたずらっこのように笑う。
この人って見た目は氷でできた人形みたいに感情なんてありませんって雰囲気なのに、表情は子どもっぽい。
魔獣を倒していた時の真剣な表情は凛々しくてかっこよかったけど。
……じゃなくて、設定!
もう一回かがんでくださいって目で合図すると、レイはやけに嬉しそうに身をかがめた。
「なにも知らずに話を合わせるなんて、私には難しいです。どういう設定で門兵さんに許可をもらうおつもりなのか教えていただけませんか?」
「ん?けどよー、お前って演技とか下手そうじゃねぇか。俺がちゃんと話をつけるからよー。その場で素直に反応しとけばいいって。ただ自分が異世界から来たーとか、俺の話を否定するとかしなけりゃいいからよー」
「え……。あ、はい。わかりました」
任せとけって、レイは言う。
確かに私は演技なんてうまくないし、誰かに任せておけばうまくいくんならこのまま任せちゃいたい。
ただ、なぁ。
私は、まだ私のほうに身をかがめてくれているレイの耳元に唇をよせ、こっそり言う。
「レイは嘘をつくの、上手なんですか?」
今までのレイの態度を見ていると、頭脳派には見えなかった。
脳筋とまでは言わないけど、猪突猛進タイプには見える。
しゃべり方とかもチャラいしな。
人は見た目で判断してはいけませんっていうけど、人の見た目には、その人の価値観や生き方が現れるのも事実なわけで。
……いやでもレイの場合、見た目は頭よさそうに見えるんだけどね。
紫の目は冷たくも見えるけれど知性にあふれているようにも見える。
すっととおった鼻梁も薄い唇も、動というよりは静、肉体派というよりは知性派に見える。
だけどしゃべったら「けどよー」だし、笑うとガキ大将みたいだし。
いいひとだし頼れるけど、小器用な嘘がつけるタイプにはとうてい見えない。
「お前ってほんと心配性だよなー」
レイは喉の奥でくくっと笑う。
いや、普段はどっちかというとのんきなほうなんだけどね。
この状況がいろいろ不安を呼んでいるだけで。
心配性のレッテルはあまり嬉しくない。
不満を口にしようとしたとき、門兵さんが「はい、次ー」と私たちのほうを見た。
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