25.元の世界に帰れるヒントを模索中ですが
まぁ少しは考えて話たほうがいいかなとは思ってるけどね。
「私が気にしているのは、そっちじゃなくてですね。魔獣は、月の色が変われば、たぶん元いた世界に戻ってるんですよね?」
「ああ。そりゃ俺らだって、あいつらが消えた先をしっているわけじゃないけどよー。魔獣の生体を調べてるやつらが言うには、元の世界に戻っている可能性が高いらしいぜ。なんかよー。しるしをつけておいた魔獣が、次にこっちの世界に来た時に調べたりしてわかったらしいけど」
「だったら、私もなんらかの条件が整えば、元の世界に戻れるかもと思って」
「ああ、そっか。そうかもなー」
意気揚々と私が言うと、レイはどこか複雑そうな顔で笑う。
わかってるよ、そう簡単じゃないってことは。
だいじょうぶですよと、私は苦笑いを返した。
「私は月の色が変わった今もここにいますから、魔獣と同じようには元の世界に戻れないのはわかってます。でも少しは可能性があがったかなぁと思いまして」
「んー、まぁそうかもなー」
魔獣が簡単に元の世界に戻っているからって、自分も帰れるとは思っていない。
期待しすぎているわけじゃないんだと言っても、レイはまだすっきりした表情にはならなかった。
「レイは心配性ですね」
「え?なんでだ?」
「私が帰れるかもって期待しすぎるのを心配してくれているんでしょう?だいじょうぶですよ。これでも期待を裏切られるのには慣れています。レイには頼りなく見えているでしょうけど、これでも30年近く生きているんですよ」
こころもち胸をそらして、大人っぽく笑う。
レイは口は悪いし、考えなしな発言はするけど、ほんとにいい人だよな。
人のことまでなんでも先回りして心配するのは、お兄ちゃんな性格っぽい。
「……べつにそんなことを心配していたわけじゃないんだけどな」
「え?」
「なんでもない。それより、街についたぞ。門兵に話をつけるから、適当に話を合わせてくれよなー」
レイに促されて、周囲に人が増えていることに気づいた。
辺りは薄暗くなり、もうすぐ夜を迎えるからだろうか、街へと入る門の前は、短い列ができている。
高くそびえたつ壁をくぐるための門のところには、簡素な鎧に身を包んだ門兵らしき人影が数名見えた。
いよいよ、異世界の街に入るんだ……!
ここまでの道のりでは、暗い森と質素な街道、畑と遠くにぽつりぽつりと立っている小さな家しか目に入らなかった。
この中の街はどんな様子なのか、あまり想像できない。
不安と好奇心で胸がおどる。
私はうなずくと、レイのマントをちょこんと握った。
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