24.魔獣の生体について知りましたが、
確かに、時間がすぎれば消えるとわかっている危険な生物を、わざわざ狩りにいくのは危険が大きい。
やりすごせば、相手は消えてくれるのだ。
こちらが犠牲をはらってまで、退治する必要はないのかもしれない。
これが人間のすみかまで来るような獣なら話は別で、なにがあっても退治する必要があるだろうが、魔獣はほとんど街までくることはないという。
「月の色が変わると消えるって、不思議ですね」
「あー。一説によるとよー、魔獣は別の世界から来ているらしいぜ?」
「え?」
ぴたりと足を止めた私は、悪くないと思う。
レイは私がなぜ動揺しているのか気づかないらしい。
そっと私の手をにぎり、歩くよう促した。
「街までもうすぐだからよー、頑張って歩けよ」
「はい。えと、じゃなくて。魔獣って、別の世界から来ているんですか?」
気が付くと、街の門はかなり近づいてきていた。
話しながら歩いていると、あっという間だ。
けれど今は、人がたくさんいるだろう街の中に入る前に、魔獣について聞いておきたかった。
「らしいぜー?なんかよー、月の色が一定の場合だけ交わってる世界があってよ、そこから来ているって話だ」
レイは軽く答える。
え。もしかして、レイはぜんぜん気づいていないんだろうか?
「あの、それって。魔獣も、私と同じで異世界から来ているってことなんですか?」
「は?」
レイは目を大きく見開いた。
そして何度かゆっくりと瞬きをする。
そうしていると、レイはよくできたビスクドールみたいに見える。
白磁のような肌の整ったお人形。
話している時はあんなに快活な印象なのに、黙っていると月の光のように静かな美しさを醸し出す。
無言のレイに見つめられるのは、なんだか居心地が悪い。
握りしめられたままの手をそっと外そうとすると、レイがぎゅっと握り返してきた。
「すまねぇ。ぜんぜん考えてなかったわ」
「あ、はい。そうみたいですね」
私が首肯すると、レイは焦ったようにつづけた。
「いやよー、お前が魔獣と一緒だって言ったつもりはないんだぜ!?」
「はい。レイに悪気がないのは、わかっていますよ」
そりゃ、あの魔獣も別の世界から来てるって聞いたらさ、異世界から来た自分と重なるようで、ちょっと嫌な気分はしたよ。
あの魔獣が「魔獣」って呼ばれるなら、私は「魔人」じゃないのってさ。
この世界の生き物じゃないものは「悪」だと断じられているようで、いい気分はしない。
だけどね。
「あんな魔獣は、私の世界にはいませんし。あれらが別の世界から来ているとしても、私の世界とは違うところから来ているんだと思います。だから、私だって、彼らが私と同じとは思ってませんから」
笑って言えば、レイはほっと息を吐いた。
「なら、よかったよ。また考えなしなこと言っちまったって、焦ったぜー」
読んでくださり、ありがとうございます。
ブクマも嬉しいです。
なかなか街までたどりつけません。




