22.ようやく名前を名乗りあいましたが
またうっかり話し込んでしまっていたけど、先を急がないとだめなんだった。
なんかなー、この人といると、やたら話し込んでいる気がする。
お互いに時間管理がダメな人間なのかなぁ。
それはともかく、私たちは街までの道をぼてぼて歩きながら、お互いに自分のことを話すことにした。
いわゆる自己紹介ってやつですね。
いまさらかよ!ってつっこみは、すでに自分でしたのでいらないよ…。
目を覚ました時点では、獣に襲われそうって非常時だったし仕方ないけど、もう少しはやく名前くらい名乗れってはなしだよね。
だけど、私はともかく、男が名乗らなかったのにはわけがあったらしい。
男の名は、レイモンド・ブロッケンシュタイン。
ブロッケンシュタインというのは、貴族らしい。
それなりに名の通った家らしく、その名を名乗って、私を緊張させても悪いと思ったんだそうだ。
「ブロッケンシュタインさん?」
長い…。
男は貴族だと名乗ったものの、爵位は明かさなかったので、失礼だけど「さん」づけで呼んでみる。
すると半歩前を歩いていた男は、振り返って笑う。
「レイでいいぜー?親しいやつは、みんなそう呼ぶし」
「レイ?」
いくらなんでも、なれなれしすぎるんじゃないかな。
親しいやつはそう呼ぶっていっても、私、親しくないしな…。
まぁ、いいか。
親しげな呼び方をしていると、やっぱり距離感縮まるしね!
この先もしばらくがっつり頼るつもりだし、距離感つめておきたいよね!
「私は、伊坂美咲。伊坂がファミリーネームで、美咲がファーストネームです。美咲って呼んでください」
「ファミリーネームがあるんだな。美咲も貴族なのか?」
レイは嬉しそうに言うけど、そうじゃないんだよ。
「私の暮らしていた世界でも貴族はいなくはないけど、私の国では、貴族っていないんです。なので、私ももちろん平民です」
「貴族がいない?じゃぁ、国はどうやって成り立っているんだ?」
レイはそうとう驚いたのだろう。
また足を止める。
だーから、いちいち足を止めていたら、赤い月の時が終わるまでに、街まで到着しないって、さっき話してたよね!?
私は、レイの隣を通り抜け、話しながら歩き続ける。
「どうって…。国の重要なことは、国民のなかから立候補者を募り、多数決で選ばれた人間が議会を開いて決定します。あとは法律という国のルールに基づいて、規制したり違反者を罰したりして、律している感じです」
「じゃぁ、まさか王もいないのか?」
レイは私の後を追って、歩きだす。
脚の長さが違うからか、私はけっこう一生懸命に早歩きしているのに、レイの動作はゆったりしている。
なんかちょっと悔しい。
私は歩くスピードを心持ちあげた。
読んでいただき、ありがとうございます。
ようやく自己紹介までたどり着きました!




