20.癒し人なるものかと疑われてますが
「…か、かわいいって……」
久々に言われたかも。
こんな美形に言われてもなーって笑いとばしたい。
でも顔が赤くなる。
だからそうやって、真顔で見つめ返すのやめてください!
自分が美形だってこと、この人わかってるのかなぁ。
「えーと、私。もうすぐ30歳なんですけど」
残りわずかだというのに、いちおうまだ20代アピールしちゃう自分の情けなさよ。
ちょっと自虐的な気分で年齢をあかす。
さて、男の反応はと伺ってみると、
「え」
きょとんと目を丸くして、私をまじまじと見返す。
騙されたーみたいな顔されたわけじゃないし、がっかりもされてない。
でもかなりびっくりしているみたい。
ま、日本人ですもんねー。
北欧系の彼からすると、だいぶん若く見えているんだろうなと勝手に納得していたら、聞きなれない言葉が返された。
「お前、癒し人なのか?」
「癒し人?」
なんですか、それ。
男は私の顔をじっと見る。
さっきみたいな甘ったるい目つきじゃなくて、観察するような視線。
頬をすべる指は、肌のハリを調べているように、素っ気ない癖に執拗だ。
科学者が、実験動物を調べているみたい。
それか、お医者さんが患者を調べているみたい、のほうが近いかな。
とにかく、だ。
……居心地わるいいいいいい!
目の下の小じわとか、目だってないよね?
さっきお化粧なおしたとき、保湿クリームもきっちり塗ったし、だいじょうぶだと思いたい。
普段から保湿に命かけてるから、年齢のわりには綺麗な肌してると思うんだけど、年齢のわりにってだけだからね。
目の前の男のように、20代前半の綺麗さを期待されても困る。
「お前の世界では、違う名前で呼ばれているのか?肉体をベストな状態に保つ能力者のことだよ。能力の高い人間は、他の人間の肉体もベストな状態にコントロールできるだろ?だからこっちの世界では、能力者は、病気や怪我の治癒者になることが多いんだ。で、癒し人って言われてる」
「えええええ?いえ。私の世界には、そもそもそんな能力のある人はいませんが」
ヒーラーみたいなものなのかな?
でも自分の肉体をベストな状態に保てるって…。
「それって、不老不死ってことですか?」
人類の夢じゃん。
羨ましい。
だけど、こういうのって、たいてい落とし穴があるよね。
そのせいで狙われたり。
他人にも能力が使えるっていうなら、よけい狙われそうだ。
能力者って知られたら、捕まって、能力を使うことを強要されたりしそう。
私には、そんな能力ないけどさ。
びびりながら聞くと、男は、首を横に振った。
「能力が減少するまでは、不老だけどよー。不死ってことはないぜ?まぁ怪我や病気には強いから、他の人間よりは死から遠いけどよー。で、俺もいちおう『癒し人』なんだぜー」
「えっ、そうなんですか?」
まさか人類の夢の体現者がここに!
あれ、ていうことは、この人、見かけどおりの年齢じゃない?
読んでくださり、ありがとうございます。
さすがに20話いくまでには、自己紹介まで行きたかったのに、無理でした。
次こそは!と思います。
こんなのろのろペースなのに、いつも読んでくださっている方々、ほんとにありがとうございます。




