19.信じてるアピールしてみましたが
「そんな……」
そこかー。そこにひっかかってたのかーと、がっくり。
まぁお人よしそうなこの人のことだ。
頼るあてのない私を家に誘ったのが、悪いことだと思っちゃったんだろうな。
そりゃ私も、知らない男の人を信用して家に行くのって怖いなって思ったし?
当たり前かもしれないけどさ。
「会ったばかりの人に、こんなことを言うとおかしく思われるかもしれませんが」
私は彼に抱きしめられたまま、うつむいて言う。
「あなたは初めから私を守ってくれて。優しくしてくれて。…こんなふうにあなたに言えば、ご迷惑かと思っていたのですが。私、あなたのことを信じています。あなたは信じていい人だって思っていますから」
こんなこと言ったらひかれないかなーとビビりつつ口にする。
うつむいたままで男の反応をうかがうけど、男はなにも言わず、私を抱きしめる腕も変化はなかった。
えー。どういうことなの、これ?
どんびきとかしてないよね?
男の懸念を払拭しつつ、「信じてますから」アピールで牽制してみたつもりなんだけど。
いや、言ってることは本心だけどさ。
人間、信じてるって言われれば、裏切りにくいかなーとかの計算はあります。
男の無反応に耐えきれなくて、おそるおそる視線を上に向ける。
と、こっちをじっと見ている男と目があった。
「……っ」
ぎょっとして、あわてて俯く。
うーわ。なんて目で、こっちを見てるんですか。
そんな切ないような優しい目で、こっち見んな。
イケメンにそんな目で見つめられるとか…。勘違いしそうになるだろうが。
なのに男は、私の顎に手をかけ、そっと私の顔を上に向かせる。
そして私の顔をまじまじと見つめ、目の下を指の腹でなでた。
優しい手つきに、体がむずがゆくなる。
ひとりでに頬が熱くなるのを感じる。
うーわ。こんな乙女反応するとかツラ。
「なんだ、やっぱりかわいいじゃねぇかよ。なーにが、顔がぐちゃぐちゃだから見ないでください、だよ」
「あっ」
そうだよ、マスカラ!とれてぐちゃぐちゃだったんじゃん。
うーわ、あんな顔を人に見られるとか、ないわー。
慌てて下を向こうとしたけど、男の手が顔を抑えていて、できない。
「そんなかわいい顔してんだから、初対面の男を簡単に信用なんてするなよ。いくら異世界人っつってもよー。それだけじゃ大した抑制力になんねぇぞ?」
読んでくださり、ありがとうございます。




