159.好きな人の学生生活って気になりますが
「懐かしい」というレイの言葉に、ダイアモンド様がこくりとうなずいた。
ふたりの目がすこしうるんでいるのに気づいて、二人の両親が今はもう亡くなっているということを思い出す。
10年前、ふたりが王立学校に通っていたころは、ご両親もまだ健在だったのかもしれない。
「俺は18歳だったね。もうすぐ卒業っていうんで、卒業パーティのパートナー選びに忙しかったな。なにしろモテるから」
アーノルド様が物憂げな様子を装いつつ自慢していたけど、これは全員に無視された。
「ということは、ゲームが発売した時期にちょうど3人は王宮学校に通っていたということですね」
うーんと考えつつ言うと、3人とダイアモンド様が顔を見合わせてうなずいた。
「俺はゲーム?のことはわかんねーけどよ、10年前は学校に通っていたかって言われれば、学校に通っていたぜ」
「ガストン・エリア様も俺と同じ年齢だから、ちょうど王宮学校に在籍してたと思うね」
アーノルド様はさっき無視されたのも気にせず、身を乗り出して会話に入ってくる。
ふーん。アーノルド様とガストン・エリア様が同じ年齢なのか。
「……あ、ところでガストン・エリア様というのは、もしかすると」
「この国の第二王子だ。エリアって国名がついているからわか……らねーか。俺、この国の名前、まだ言ってなかったよな……?」
「うん、初耳」
ほんといろいろ覚えたつもりでも、抜けている。
まぁこの屋敷から出ることもない私では、国の名前なんて関係ないといえばないけど……。
「王子と先生って、定番といえば定番かな。……ということは、ゲームの中の【伊坂美咲】は10年前に17歳?」
「……やっぱりゲームしていたでしょ?」
ローズマリー様が疑惑の目で見てきます。こわいこわい。
でもこの程度、乙女ゲームとかそっち系の小説やマンガ読んでいる人なら簡単に推測できるはずだよね?
「王宮とか出てくるなら王子が定番だけどさ。学校ものなら、先輩、同級生、後輩はテッパンで存在するだろうなっていう推理ですよ」
16歳でレイが入学して、18歳のアーノルド様が卒業間近なら、学校への在籍はやく3年。
先輩、後輩を攻略キャラとして登場させるなら、主人公の年齢は17歳のはずって考えただけだ。
肩をすくめていうと、ローズマリー様がぐっと黙る。
ふふふん。どうだ、名推理でしょ?
乙女ゲーム事態はしないけど、ゲームのスピンオフの小説や、ゲームをテーマにした小説はいっぱい読んだから、この程度のことは察せられるのだよ。
なんて、無駄にローズマリー様の不信をあおるのは賢いやり方じゃないんだろうけど、話が進まないからね。
「私の年齢も違うってことですね。10年前でも、私は20歳ですし」
ゲームのヒロインに私の名前がつけられたのが、20歳のお祝いなんだしね。
もっとも私の年齢差も「ゲームの必要性にあわせた」ってことかもしれないけど。
学校が舞台の乙女ゲームなら、ヒロインは学生なのが自然だし。
とはいえ、私はごく普通の人間で、癒し人でも、魔力量が豊富でもないはずだ。
なんだかなぁ。
いろいろ、ちぐはぐなんだよね。
「結局、よくわからないですよね……。偶然の一致にしては合致しすぎているし、ゲーム通りというには違いすぎるし」
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