158.時間にずれがあるようですが
だけど、それもローズマリー様の言うことが本当なら、だ。
ローズマリー様は、「日本」や「乙女ゲーム」なんていうこちらの世界にはないはずの言葉を口にした。
だから日本人だった人が転生したということは、信じてもいいかもしれない。
だけど、私にはひとつ疑問に思っていることがあった。
「ローズマリー様。ローズマリー様って、19歳なんですよね?」
昨日ダイアモンド様が教えてくれた情報を確認すると、ローズマリー様はこくんとうなずいた。
「そうよ。19歳。それがどうかしたの?」
長いまつげをぱちぱちさせて、ローズマリー様は不思議そうに尋ねる。
ということは、彼女は気づいていないんだ。
「私は今30歳で、【王宮学校恋物語】が発売されたのは、私が20歳の時です。つまり、10年前なんです」
「……それが、どうかしたの?」
ゆっくりと諭すように言うけど、ローズマリー様にはわからなかったようだ。
こてんと首をかしげるローズマリー様と一緒に、オットー様も首をかしげる。
「時間が、あわないと思うんです。10年前に発売されたゲームをした後で、ローズマリー様の前世が終わって、こちらの世界に転生したのだとすれば。ローズマリー様は今、10歳以下であるはずです。……でしょう?」
Q.E.D.とばかりに手を広げて言えば、ローズマリー様は目を大きく見開いた。
綺麗なグリーンの瞳が、驚愕に揺れる。
「え、え、え?どういうことなの……?」
それは、私のほうが聞きたい。
「ひとつ考えられるのは、この世界と私たちの世界の時間系列が異なるということです。この世界と地球の時間系列が同じなら、10年前にローズマリー様はふたつの世界に同時に存在していたことになるんですから」
わからないなりに仮説を立ててみるけど、ローズマリー様はきょとんとするばかりだ。
……うん、私もとりあえず思いついたことを口にしてみたものの、ピンとこない。
「……えっと、とりあえず、状況を把握しましょう。10年前というと、こちらの世界ではローズマリー様が9歳ですか?」
「うん、そうだな。で、俺が17歳。ちょうど王宮学校に通っていたころだな」
ローズマリー様への確認を、オットー様が背後から口をはさむ。
はいはい。代わりに返事しなくていいんですけどねー?
「レイは」
「俺とダイアモンドは、16歳だな。王宮学校に入学した年だぜー」
懐かしいな、とレイが遠くを見る目で言う。
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