156.偶然の一致とは思えませんが
「名ばかりの学校、ですか?」
学校は、学校だよね?
王宮学校っていうのは特別なのかな?
意味がわからない。
首をかしげると、レイは丁寧に説明してくれた。
「学校っていうけど、授業らしい授業はねーんだよ。学問にしろ、専門的な勉強にしろ、たいていのことは16歳までに習得してろって言われてる。で、16歳で王宮の一角にある『王宮学校』で、国中の貴族の子どもやら推薦を得た子どもが集まって、親交を深めたり一緒に研究したり…って感じなんだ」
大学と大学院を混ぜた感じなのかな。エリート専門の。
そういえば、私、レイに地球の学校についていろいろ教えているのに、こっちの学校についてはほとんど知らないんだ。
レイはこっちでは学校なんてないように語っていたけど、あれは平民限定のことなのかな。
……1か月もこっちにいて、こっちのこともそれなりに知ったつもりでいても、やっぱり色んなことが知らないままなんだ。
30年も暮らしていた地球のことだってすべてを知っているわけじゃないんだから、たった1か月でこっちの世界を知り尽くしているはずなんてないけど、地球の学校のことをレイに教えるって意気込んでいたんだから、こっちの学校についてはちゃんと知るべきだった。
あとでもっといろいろ聞こう、と心にメモをする。
「ゲームでは、『王宮学校』は普通の学校なの」
ローズマリー様が、じっと私を見つめながら言う。
「日本の学校みたいに、朝から晩まで授業があって。数学とか外国語とか、理科とかを勉強するの」
「じゃぁ、現実とゲームの設定は違うんですね?」
ゲームと違うことは、ここにもある。
……とはいえ、やっぱりローズマリー様が言うように、共通点も多くて、偶然だと言い切るのは難しい気がするんだけど。
私の胸にも、ローズマリー様と同じ不安が育ち始めている。
それを無視して、ゲームとの違いを指摘すると、
「そうだけど…。でも授業内容はゲームの大筋とは関係ないし、ある程度ゲームをする人間に馴染みのある設定のほうが受け入れられやすいから変わっているのかもしれないし」
ローズマリー様はかわいらしいお顔に似合わない、しかめ面で言う。
話しているうちにパニックから立ち直ったらしいローズマリー様は、さっきまでの泣き虫な駄々っ子ではなくなっていた。
口調はあまったるいし、相変わらずオットー様にべったりしているけど、ちゃんと言葉が通じそうな感じがある。
ちゃんと会話が成り立っていることに胸をなでおろし、疑問点を口にした。
「ローズマリー様のそのご意見だと、こちらの世界が先に存在していて、ゲームはそれを模して造られたってことになりませんか?」
読んでくださり、ありがとうございます。




