149.異世界人だって、バレているようですが
ローズマリーのネタばらし回まで連投中です。
私が「地球」から来た異世界の人間だということは、レイとダイアモンド様、フィリップ様様やこのお屋敷の数人の使用人以外知らないことだ。
他の人間はみんな私のことを「遠い地方からやってきたレイの病弱な婚約者」だと思っている。
つっこみどころは多い設定だけど、あえて嘘の設定を細かくつくったりはせず、情報はほぼすべて「秘密」で押し通している。
これは私が元の世界に帰ることになるか、このままレイの妻となるかでつくるべき嘘の設定が変わってくるかららしい。
あまりにも私の身元がわからないので、あちこちでひそかに調査されているみたいなんだけど、もちろん私の身元なんてわかるはずもなく。
今では、「レイに見初められた町娘」や「遠い異教徒にあがめられている聖女」などという謎な噂が蔓延しているらしい。
ちなみに私付きのメイドのメアリーによると、いちばん人気の設定は「レイとお互いに一目ぼれした異国の王女が、決められた婚約者のもとに嫁ぐ際、かけおちしてきた」というものらしい。わーぉ。
私が王女様とか、笑うしかないわー。
ともあれ、私が異世界から来たってことは、いまだバレていないはずなんだけど……。
「オットー・ミヒテンシュタイン。君は、美咲さんが別の世界から来たと思っているのですか?」
フィリップ様が、言う。
それはこれまで私が知っていた穏やかで優しいフィリップ様とは全く違う印象の、冴え冴えとした声音だった。
思わずフィリップ様のお顔を見ると、フィリップ様のお顔にはいつもの笑顔がなかった。
オットー様の言動を推し量るように彼を観るフィリップ様を見て、私は改めてフィリップ様が500年の時を生きた年配者だと思い知る。
激動の時代を生き抜きここに存在するフィリップ様は、私たちと同じ部屋にいて同じように話していても、同じものを見ているのではないのだと改めて感じさせられた。
オットー様は、そんなフィリップ様の視線をまっすぐに受け止め、迷いなく肯定した。
「思っているのではなく、知っていると言い換えてもいいかもしれません。正確には、知っているのは俺ではなく、ローズマリーなんですけどね」
「ローズマリー様が……?」
フィリップ様の表情に、困惑が混ざる。
私は驚きすぎて、ただ茫然とローズマリー様に視線を向けた。
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