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148/162

148.恋人の幼馴染が病んでいるようですが

ネタばらしまでの連投中です。

でも、レイのセリフから察すると、オットー様とローズマリー様の関係は、いつもこんなふうなんだろうな。

こういうのって、本当にローズマリー様のためによくないと思うんだ。

でもオットー様とローズマリー様にとっては、自分たちの関係はこれでいいんだろう。

そうなると、周囲が口をはさむのは面倒になる。

いくら相手のためを思って忠言しても、相手が一顧だにしないんじゃ、忠告する気持ちも失せるってもんだ。

彼らの古くからの知己であるらしいアーノルド様もダイアモンド様も、呆れたように見ているだけだ。

でも、レイは苦言を呈する。

きっとこれまで何度も無視されたであろう苦言でも、これからも何度も口にするんだろう。


そんなレイの「正しい」性格は、人によっては疎ましいだろうけど、私には眩しい。

私は他人のために、疎まれるだろう苦言なんて、ほとんど口にしない。

事なかれ主義で、適当にその場がすぎるのを一番に望んでしまう。

自分は他人に忠告するほどエラい人間じゃないってのも理由だけど、他人のために口を出して、嫌われる可能性があるなら、わざわざそんな自分のメリットのない行動はしたくないってのも大きな理由だったりする。

そんなダメな自分を自覚しているから、自分が好きになった相手が、こんな「いい人」なのがすごく嬉しかったりする。

あんまり「いい人」だと苦労も多そうだから、心配でもあるけどね。


などと私はレイに惚れ直していたのだけど、オットー様はへろっと笑って返す。


「ローズマリーは、このままでいいんだよ。ダメなところなんて、なにもないって」


にこにこ笑うオットー様は、ローズマリー様をいとおしげに抱きしめる。

だけど私の背中には、冷たい汗が流れた。


あれ、この人、もしかすると病んでいる……?


真っ当で常識人だと思ったレイのお友達に対する評価が、暗黒に染まる。

思わず周囲の人の反応を見ると、アーノルド様とダイアモンド様は憮然としているし、フィー様はいつも通りの感情が読めない笑みを浮かべている。

レイはますます怒って、なにか言い返そうとしたけれど、ぐっと唇をかんで言葉を吞んだ。


「……とりあえず、今は美咲の話を先にするぜ。オットーでいいから、事情があるなら話せよ」


「うん、じゃぁ。彼女の名前は、伊坂美咲。出身は【別の世界】だな?」


まさかの指摘でした。

とっさに叫ばなかっただけ、私にしては上出来だと思いたい。


レイもダイアモンド様も、息をのむ。

沈黙がおりた室内には、探り合うような緊張感がみなぎっていた。

読んでくださり、ありがとうございます。


もうちょっと連投続きます。

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