145.薔薇色のドレスは素敵ですが
ローズマリー様は、中身もずいぶんお子様みたいだけど、見た目もこの中でだんとつに幼く見える。
実際に、ローズマリー様はこの中でいちばん年下らしい。
だけどレイやダイアモンド様は癒し人だから、外見年齢は20歳そこそこ。
19歳のローズマリー様とほぼ同じ外見年齢なんだよね。
それなのに、ローズマリー様だけが幼く見えるのは、態度と服装のせいだと思う。
フィー様とダイアモンド様は、お仕事としてお招きした方のお出迎えだからということで、それぞれお仕事の正装だ。
フィー様は魔術師の正装である黒のローブをまとい、ダイアモンド様は聖騎士の正装である白の詰襟の軍服を着ている。
オットー様とアーノルド様は、旅装ということで軍兵の制服ではないけれど、それなりにかっちりしたスーツ姿だ。
お二人も、これがただ知人に会いに来た旅行ではなく、仕事の一貫だという意識があるんだろう。
私も、初めてのお客様にお会いするということもあり、きちんとした印象の紺のシンプルなワンピースを着ている。
全体的に仕事中であることを意識した落ち着いた色合いの服装が多い中、ローズマリー様だけが、華やかな濃い薔薇色のワンピースを着ていた。
ローズマリー様がお召しになっているワンピースは、襟ぐりに飾られているレースがアンティークな色調で、お洋服自体は子どもっぽいというわけではない。
けれど、ふわりと広がる薔薇色のワンピースは、いかにもプライベートの女の子という感じで、お仕事モードの他の人々の中で、浮いている。
それでも居住まいがきちんとしていればさほど気にならないかもしれないけれど、ローズマリー様ときたら、オットー様のおひざの上に座っているだもんなぁ。
そりゃ、お子様に見えますって。
私は、ローズマリー様に怖がられているので、すこし離れた場所に座っていた。
レイはいちおうこの館の主だから、お客様であるローズマリー様たちの近くに座っている。
だから私とレイの間はけっこう距離があるのだけど、レイの真正面に座っているので、レイの様子はよく見える。
とうぜん、私の目は自然とレイを追っていた。
なので、レイがさっきからイライラしているのを抑えるように、椅子のひじおきをぎゅうぎゅう握っては離し、握っては離しを繰り返しているのに気づいていた。
レイは苛立ちを底に秘めたような、抑えた口調で言う。
「あぁ、謝罪は受け入れるけどよー。なんか理由あんだろ、ローズマリー。それ、言ってくれねぇか?このままじゃすっきりしねぇしよー」
「そ、それは……」
レイの非難のまなざしを受けて、ローズマリー様は、口ごもる。
そして、ちらりと私に視線を向けてきた。
視線があったので、怯えさせないようにそっと笑いかける。
けれどローズマリー様は表情をこわばらせたまま、オットー様の腕に顔を押し付けた。
「無理よ無理無理」
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