144.自分よりダメな子って久しぶりに見ましたが
さて、たっぷり30分後です。
オットー様と存分にいちゃいちゃしたおかげか、ローズマリー様はすこし落ち着かれたようだった。
なので、玄関ホールで立ち尽くしていた私たちは、応接室へ移った。
ついでに、皆様のお荷物や脱いだマントは、メイドさんたちにお部屋に運んでもらう。
全員が着席して、お茶を手にしたときには、まだ朝なのに疲れちゃっていた。
「で?ローズマリー、急にどうしたんだ?」
軽い口調で尋ねたのは、アーノルド様だった。
ローズマリー様は目元をこすりながら、ぎゅうぎゅうオットー様の腕を抱きしめつつ、口を開いた。
ちなみに、ローズマリー様とオットー様はひとり用の椅子にお二人で座っている。
ゆったりした椅子だけど、さすがにお二人で一脚の椅子に座るのには無理があるので、ローズマリー様はオットー様の膝と椅子のひじおきに腰かけているように見える。
ちょっと目のやり場に困る光景だけど、美男美女のいちゃいちゃを堪能できるなんてラッキーだと思っておく。
……たぶん、悪い子じゃないんだ。ただいちゃいちゃしているだけで。
「ちょっと動揺しちゃったのよ。子供みたいに泣いたりして、悪かったわね。一応謝罪はしておくわ」
私の精神をちまちま削っているローズマリー様は、拗ねたようにそっぽをむいたまま、のたまわれる。
うわぁ、常識ないなぁ。
若いとはいえ、それこそ子供じゃないのに、なんだこの態度。
これで謝罪とか。笑うわー。……笑うしかないわー。
しかしかわいいから許す。
っていうか「許さない!」とか言えませんしね。
レイがちらりとフィー様を見ると、フィー様は笑ってうなずいた。
それからアーノルド様、私、ダイアモンド様に視線で確認すると、レイは場をとりなすように、落ち着いた声音で言う。
「謝罪は受け入れるってことで、全員一致だ。けどよー、ローズマリー。さっきの醜態の原因はなんだよ?いくらお前でも、あんなんなるのは珍しいだろ」
おぉ。レイ、厳しいな。
謝罪は受け入れると言いつつ、微妙に言葉にトゲを感じる。
「いくらお前でも」って、普段からのローズマリー様の態度を批判しているよね?
うがちすぎかな?
でも、ちょっとは非難しておいたほうがローズマリー様のためだよね。
私だって立場的に許されるなら、とりあえず座るのは一人で座ろうよ!って指導したい。
私もたいがい世間知らずだと思うけど、この子はこのままじゃダメだろう。
意外にもなんて言ったら失礼だけど、ローズマリー様は、レイの言葉をきちんと受け止めたみたいだった。
「ごめんなさい」
唇をかんで、頭を下げる。
そのポジションは相変わらずオットー様のおひざの上だけどね。
でも、ちゃんと謝れるじゃないですか!
偉いぞ!
なんて、聞き分けのない子どもに対するように心の中で拍手を送る。
読んでくださり、ありがとうございます。




