138.チートにも、上には上がいるようですが
「やきもちって…。否定はしねーけどよ、そんなこといちいち口にするなよ」
「ごめんなさい」
赤くなった顔を片手で覆って、レイがうめく。
いちおう謝罪している私の声がはずんでしまうのは、仕方ないと思うの。
好きな人のささやかなやきもちって、嬉しいよね。
「レイがそういうなら、お会いしないように気をつけるね。でもレイの幼馴染なら、どんな人かお会いしたかったな」
「挨拶くらいはしてもいいけどよー。俺が一緒の時だけにしとけよ。あいつらなんて、別に普通だ、普通。あいつらの家とは、家が似たり寄ったりだからよー、子どものころはよく王城とかで会ってたんだよ」
王城で会っていたって時点で、普通ではないような。
「お金持ちの方なんですねー」
乾いた笑いを浮かべると、それまで申し訳なさそうな表情で黙って聞いていたフィリップ様が口をはさんだ。
「この王国は、東西南北に有力な貴族がいて、それぞれの地方を治めているんですよ。東はここ、ブロッケンシュタイン家。今度来られるアーノルド・ニーザーシュタイン様のご実家であるニーザーシュタイン家が西を、オットー・ミヒテンシュタインのミヒテンシュタイン家が南を治めているんですよ」
「ちなみに、北はフィー様の領地だよ。キルヒェンシュタイン家」
「東西南北そろい踏みですか!?」
なにその首脳会談みたいなの。
国の主要な家のメンツがそろい踏みって、庶民の私からするとちょっと怖いよ。
「いや、そんな大げさなもんじゃねーって。当主なのはフィー様だけだしよ。俺のとこは当主の弟は王都にいるし、アルんとこもオットーんとこもご両親が健在だからよー、俺らは特に権限とかもねぇし」
レイの仕事ぶりをみていると、なんだかんだ言って、家のお仕事もいっぱいしているし、権限だってある気がするんだけどな。
レイのお友達のお二人も、そういう感じなのかな。
でも、それ以上に驚いたのは、フィリップ様のことだよ。
「フィリップ様、貴族としてもすごく上位だったんですね」
国を四つの地方に分けて、それぞれの地域を有力な貴族に治めさせているのなら、単純に考えればフィリップ様は国でも四位以内の有力貴族の当主ってわけだ。
そのうえ魔術師たちの「塔」でも実力者なわけで。
なにそれ、すごい。
あらためて、フィリップ様のチートぶりにおののく。
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