130.結婚するって噂がありましたが
レイの傍にいるのは、好き。
一緒にいるとずっとずっと一緒にいたいって思う。
だけど、元の世界に帰るっていう願いはなくなるわけなくって。
今はまだこの時間を大切にしていくだけで、いろいろ考えるのはやめることにしていた。
そんな私たちを、周囲の人は静かに見守ってくれている……わけではない。
私とレイが「好きだけど、付き合うわけにはいかないし」なんてもだもだやっている間、ブロッケンシュタイン領はちょっとした騒ぎになっていた。
原因はもちろん、もうすぐレイが結婚するかも!っていう噂を発端とするお祭り騒ぎだ。
その話をダイアモンド様から伺ったときは、リアルに凍り付いたよ。
だってダイアモンド様ってば、夕食の席でパンをもぐもぐ咀嚼しながら、「そういえばさー」なんて軽い調子で衝撃的なことをいうんだもん。
「レイたちの結婚式の準備にかかわりたいって商人たちがひっきりなしに訪れてくるんだけど」
「はぅっ!?」
その時はちょうど、この世界にいる間だけでもレイと一緒にいようって決心して、もう一度付き合いはじめた時だった。
まだ付き合うってなった当日かその次の日くらいだったんじゃないかな。
水を喉につまらせてせき込みながらも、ダイアモンド様に伺った。
「レイと結婚…って、あの話まだ残っていたんですか!?」
「え。そりゃ誰も否定しないし」
「なんで誰も否定しないんですか!?そんな話早々に否定しないと大変な噂になるんじゃぁ」
「あ、もう大騒ぎになっているよ」
「レ、レイ?!なんでレイも否定してくれなかったんですか!?」
つい最近まで私たちは付き合うって話もナシにしていたのに、街をあげて結婚のお祝い準備をされているとはどういうことなの。
…まさか、元の世界に戻す気なんてないってことなのか。
疑いの目で見てしまう。
するとレイは苦笑いをうかべて、
「ちげーよ。実際に結婚するかどうかは別としてよー。お前は俺と結婚するってことにしておこうと思ってたんだよ」
「は!?」
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