124.ノブリスオブリージュなんてお話の中だけで充分なのですが
本日、2度目の更新です。
私は基本的に馬鹿だ。
おまけに面食いで恋愛沙汰は不慣れときている。
キラキラのイケメン、しかも好きになっちゃっている相手に至近距離で謝られて、退けることなんてできようか。
いや、できるわけない(反語)。
はー。もう。
いやになっちゃうなー。
「じゃぁさぁ。レイは、私たちがレイのことを心配しているってことはわかっているんだよね?」
「ああ。ありがたいと思ってるぜー」
「じゃぁさ。今まではともかく、これからは自分の身をもっと大切にしてくれる?」
これだけうなずいてくれたら、もう他のことはつっこまないでおこう。
レイが承諾してくれることを前提に、私は提案した。
なのに、レイは。
そのお綺麗な顔をほんの少し申し訳なさそうにゆがめただけで、私の提案をきっぱりと断ってきた。
「いつだって俺は俺を大切にしているさ。ただ、もっと優先すべき事項があるってだけでよー」
「自分の身より大切にしなくちゃいけないものって、なに!?」
私は苛立って、声を荒げた。
するとレイはへろりと笑って、言う。
「え?領民の生活だろ?あとできれば家族とかも幸せだといーよな?」
「…そりゃっ、そうだけど……さぁっ」
とうぜんとばかりに言われて、私は膝からへなへなと崩れ落ちた。
レイは「だいじょうぶかよー」と焦ったふうもなく、私の前に膝を折る。
「レイって、いい上司だよね」
「上司?」
「上に立つ人ってことだよ…」
上司はちょっと違ったか。
でもレイって今は領主でも当主でもないんだよね?
確か弟さんに任せているはず。
今の職業は聖騎士だっけ。
だけどレイの意識は、領主だったころと変わらないんだろう。
少なくても、領民や彼らの生活の保護者という意識は、レイのアイデンティティみたいに強い。
ノブリスオブリージュって厄介だな。
私だって、小説やなんかで意識の高い王様とかが活躍するお話は好きだ。
自分の国の民のためには我が身をもなげうって、最前線で死力を尽くす王様。
いいお話だなぁと思う。
だけどさ、平和でのんびりした国から来た人間としては、自分の好きな人が毒をもられている現状でも、我が身を大切にしてくれないのは困る。
もうほんと心が削られる。
いい上司と評されてうれしそうなレイを見て、無い知恵を絞ってみる。
「うん、だからね。レイみたいないい上司がいなくなったら、領民の人たちもがっかりするよ。レイは領民のひとたちのことを考えて、実行する能力もあるいい上司だもん。そういう人は長生きして、長く施政を続けてあげるのこそ喜ばれると思うよ」
「いや、今は弟が領主だしな。というか、俺も死ぬ気はないぞ?」
「死ななきゃいいってものじゃないからね!?」
「おぉ?まぁ、今回の件は、本当にだいじょうぶだから、気にするなよ」
「気にするよ…。安心できるようなこと、なにも言ってくれてないからね?」
読んでくださり、ありがとうございます。




