表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
122/162

122.口先だけの謝罪ではないのですが

レイって姿勢いいよな。

垂直に頭をさげているその背中が綺麗にまっすぐになっている。

やっぱり日々騎士として鍛錬しているたまものなのだろうか。


だけど、なぜレイが私に頭を下げるんだろう。

謝らなくちゃいけないのは、私のはずだ。


「え?」


わけがわからなくて、思わずレイをうろんな目でみてしまう。


「怒ってるよな…」


「怒っているけど」


ぽろりと本音がこぼれる。

私が悪かったのだと思ってはいるけれど、レイに怒っていないと言えば嘘になる。

だけどそれは、口にするつもりはなかった言葉だ。


だって、レイのほうから謝ってくれるなんて思ってもみなかったんだもの。


レイは顔をあげて、驚きのあまり無表情になってしまった私の顔を見て、苦い表情をうかべる。


「だよな…」


意気消沈するレイに、私のほうがうろたえてしまう。


「怒ってはいるけど…!だけど、レイが謝ることじゃないですよ。私が…、口を出すべきじゃなかったんです」


「美咲…」


「ごめんなさい!」


私は、さっきのレイよりももっと深く頭をさげて、言う。


「レイのお仕事のこととかわからないくせに、口を出して困らせてしまって…。ただレイにはもっと自分のことを大切にしてほしいって思っただけなんです。だけどあんなところで口にするべきじゃなかったです」


「いや、お前が悪いわけじゃな」


「私、ちょっと調子に乗っていたんだと思います。レイに優しくされて。……ここは私の世界じゃないのに、私の世界の理論をふりかざして、レイの考えを自分の考えに沿わせようとしていました」


「メアリー。ちょっと席を外してくれ」


頭を下げたまま、一気に言う。

するとレイはこわばった声音で、メアリーに声をかけたようだった。


すぐにメアリーの足音が聞こえ、ドアが開閉する。

またこの部屋にレイと二人きりだと思った瞬間、レイの手が私の肩に触れ、さげていた頭をもとに戻される。


「謝るのは、美咲じゃねーよ。俺だろ?…美咲に、心配してくれるのが嬉しいなんて言ったくせに、お前が心配してくれたのをはねつけてよー」


「怒ってないの?」


「怒ることじゃねーだろ。俺が、望んだことだ」


レイは私の髪を指ですかしながら、私の顔を覗き込んだ。


「また、泣いてたのか」


「ちょっとだけだもん」


「…お前を泣かせたくないって思ってるのによー。なにやってんだろうな、俺は」


レイは苦笑まじりに言うと、顔をぐっと近づけてくる。

その吐息すら感じるほど近くくて、心臓がどくりと跳ねる。


「なぁ」


「な、に…」


「キスしていいか?」


読んでくださり、ありがとうございます。

ブクマも嬉しいです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ