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118/162

118.元の世界に戻りたいけどこの世界にもいたいなんて矛盾ですが

安心…、できるような内容だっけ?


「えっと、ま、まぁ、レイにはいちおう害はないし、周囲の人も安全ってことだから安心してもいいのかな…?」


「そうそう!だいじょうぶだから!」


レイが答えるより前に、ダイアモンド様が言い、フィリップ様も大きくうなずく。

だけどさ。


「でもレイが危ない目にあうのを黙ってみているのは、嫌なんですけど。それにレイ自身がそれを当たり前に甘受しているのは、もっといや」


それは私のわがままかもしれない。

お世話になって助けてもらっている上にわがまままで言うなんてダメすぎる。

でも、これは言わないと駄目なわがままな気がするんだ。


「ダイアモンド様もフィリップ様も…、お嫌なんでしょう?」


こんな言い方は狡い。

お二人はさっきすごくお辛そうだったから、お二人もレイが危ないめにあうのは嫌なんだと思う。

でもいまここでそうおっしゃらないってことは、ご自身のお気持ち以上に重視していることがあるからおっしゃらないんだと思うのに。

わかっていて、私はそれを口にする。


思ったとおり、ダイアモンド様は顔を曇らせて目をそらした。

その表情をみて、私は自分が口にしたことを後悔した。


「美咲。お前が心配してくれているんだろうなってことはわかるけどよー。これは俺の仕事の一貫だからよぉ。ま、見逃せよ」


「……はい」


困り顔でレイに言われて、私はうなずいた。

うなずくしかないじゃん。

これ以上のわがままは言えない。


ああ、悔しいな。


レイにはレイの世界が、ある。

この世界は私が生まれ育った世界とは違うし、レイはその中でも責任が重い立場の人で、私のこれまでの世界とはぜんぜん違う生き方をしている人だ。

その彼に、自分の世界ではこれが当たり前だし必要なのだと言われてしまえば、私には口を出せない。

例えさっき彼と想いを交わしたとしても。

…私は、もうすぐ自分の世界に戻るんだから。


せめて私がずっとこの世界にいるのなら。

彼と結婚して未来を共にするのなら、彼の世界の常識なんて知らないって言えるのに。

あなたが傷つくかもしれないことが、人に害されることが、それだけで私は嫌なんだと言えるのに。


私は、できるだけはやく元の世界に戻りたい。

だけどレイの傍にもいたいと思っている。


レイにはこの世界にも、ダイアモンド様たちのようにレイのことを大切に思っている人がいっぱいいる。

その彼らにも口出しできないことなら、私がそばにいたっておんなじかもしれない。

だけどレイの傍にいて、彼に、彼自身のことをもっと大切にしてよって口うるさく言ってあげたい。


なんでこの人、こんなに自分のことはほったらかしなんだよ。

さっきのダイアモンド様の言葉を借りれば、レイは権力も武力も知力もある癒し人でチートな存在だ。

なのに危なっかしい。

私みたいな凡庸なニートに、そんなことを思われるのはレイだって心外だろうけど。


読んでくださり、ありがとうございます。

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