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114.ケンカにもいろいろあると思うのですが

「……え」


レイはダイアモンド様とフィリップ様を交互に見る。

その顔には、信じられないと書いてあるけど。


「えっと、その…。二人とも、ありがとうな……?」


「ありがとうございます!」


おずおずとお礼を言うレイは、自分のために誰かが動いてくれることが意外だと言わんばかりの態度だ。

そんなんじゃ、レイのことを大切に思って動いてくださっているお二人にも失礼でしょうが。


……とはいえ、私がレイの隣にいって、思わずお二人に頭を下げてしまったのは、僭越ってもんですよね。

うん、わかってる。

でも思わず体が動いちゃったんだもん!

そんな三人して、奇妙な動く物体を見る目で見なくてもいいじゃないですか!


「えーっと?美咲?」


おそるおそるとレイが私の名前を呼ぶ。

そ、そんな腫れ物に触るような態度とらなくたって、私は正常ですから!


「いえ、えっと。僭越なのは承知していますが、お二人のおかげで、レイが『塔』から狙われる危険が減ったなら、私にとっても嬉しいことなので、つい」


「そんな心配しなくてもだいじょうぶだぞ?『塔』の連中に嫌われているって言っても、いまのところ大したことされてないし」


「でも少しでもレイに敵意を持つ人が減ったら、そのほうが嬉しいじゃないですか。私、レイが人に悪意を持たれているのも嫌ですし」


「あ、そ、そうか」


え。なんでそこで赤くなるんです?

私の顔を覗き込んでいたレイのほっぺたがうっすらと赤くなったのを不思議に思っていると、ダイアモンド様がゲラゲラと音をたてて笑った。


「ヤ、ヤバい…。あんたたち面白すぎ」


「ダイアモンド。あまり笑っては失礼ですよ」


「ヤ、だって、フィリップ様。あの仕事馬鹿のレイが、あんなセリフで赤くなるとか。これで笑うなっていうほうが無理だよ」


といって、ダイアモンド様はまたゲラゲラ笑う。

喜んでもらえたなら幸いです。

私はいま、それどころじゃないんで。


大笑いするダイアモンド様はスルーして、私はレイの前にまわり、じっと彼の目を見て尋ねた。


「ところで、つかぬことをお伺いしますが。レイ?『塔』にされている大したことない嫌がらせは、あるんですね?具体的にはどんなことをされているんですか?」


知らないなんて言わせないぞと、さっきのレイのセリフを反駁する。

だけど、レイはしまったという顔もせず、ごく当たり前のように答えた。


「え。ほんと大したことないって。たまにケンカ売られたり、毒をもられたりする程度。あ、俺以外の人間にはぜんぜん手出ししてこねーから、美咲も心配することないからな」


レイって馬鹿なのかなぁ。

それで私が心配しないなんて、あるはずないよね。

読んでくださり、ありがとうございます。


お久しぶりです。

5月中に再開するとお伝えしていましたのに、遅れまして申し訳ございません。

またお付き合いいただけると嬉しいです。

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