表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
112/162

112.可能であることと「できる」ことには大きな差があるようですが

双子はじゃれあうように不満をぶつけていたのを中止して、そろって私にこたえくれた。


「そうなんだよなー」


「そうなんだよ!」


異口同音に言うくせに、二人の表情はまるきり逆だ。

レイは残念そうに、ダイアモンド様は嬉しそうに、私に答えた。


「魔石をつくるのに欠かせない鉱物がさぁ、うちでしか採掘できないものがあるんだよ。その原料になる鉱物自体が高価でさ。製造方法を公開しても、他領では製造はままならないみたい」


「つくれないって言っても、ぜんぜん無理ってわけじゃないぜ?実際『塔』や魔術の研究に熱心な領からは、製造に必要な鉱物の注文が相次いでいるしよー。『塔』では製造に成功したんだろ?」


「ええ。わたくしも作りましたよ。われわれも一枚岩ではありませんし、そもそも『塔』の人間は研究第一の人間が多いですからね。研究費が嵩むというのに、誰もが自分の手で魔石をつくりたいと言って、それぞれ別個に実験をしているようです」


「ようですって…。お前もそのひとりだろ」


レイが呆れたようにフィリップ様に言うと、フィリップ様は「ふふふ」と笑い声をもらした。


「まさか『魔石』を自分の手でつくれるなんて思いませんでしたからね。材料費は凄まじく高価でしたが、何年分ものお給料をつぎ込んじゃいましたよ」


フィリップ様はうっとりと夢見るような表情で、架空のお鍋をかき混ぜるようなしぐさをすると、レイが頭を抱えてうめいた。


「あれを個人でつくろうとするとか、いくら金があっても足りなくなるだろうが。実験に成功して『魔石』うっぱらっても回収するにしても、材料費もでねーんじゃねーの。『塔』の研究者たちの執念、怖ぇよ。そりゃ俺は『塔』でも研究を進めてくれりゃ助かるけどよー」


レイは虚空を見つめながら、「研究者には原料の代金を割引するか?」とかぶつぶつ言い始めた。

すると即座にダイアモンド様が、レイの頭をはたく。


「これ以上、外部の人間を優遇するような真似は許さないよ!せめてもうちょい自領の流通が行き届いてからにするよ!!」


「いってーな。わかってるっつーの。急いて事をしそんじるつもりはねーよ。だいたい今の俺に決定権はねぇだろ。俺はもう領主でもねーんだし。考えるくらい考えさせろっつーの」


「あんたが進言したら、エドモンドは考えざるをえないよ。いいから、レイ。あんたはしばらく黙っとけよ。エドモンドの施策に口は出さない。そう決めたんだろ?」


「……わーってるって」


ダイアモンド様は苛立ったようにキツい口調で言う。

レイはバツが悪そうな表情であいまいに笑い、「悪い」と言う。

読んでくださり、ありがとうございます。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ