11.今後の作戦をたててみましたが
私が彼に視線を向けると、男も、私を見ていた。
赤い月を見て困惑する私に、戸惑いの表情を浮かべている。
目と目があって、私が彼の目をじっと見つめ返すと、彼の顔が一気に赤く染まった。
「……っ、あ、あのよー。どうかしたのか?どっか痛めたのかよ?」
「ううん、違うんだけど」
私の前でひんぱんに赤面する彼の反応にも、ちょっと困惑する。
この反応、どう捉えたらいいんだろう。
単に女に慣れていなくて、女の前では赤面するだけ?
それとも、私に好意があるって解釈しちゃってもいい?
自惚れちゃいそうだ。
だけど、それはそれとして。
この人が、私のことをじゅうぶんすぎるほど気遣ってくれているのは、本当。
見ず知らずの私を守るため、獣たちと戦ってくれるほど、優しくて頼れる人だってことも、真実。
なら、私は信じるほうに賭けてみることした。
木のうろに隠れていた間に考えた今後の対策は、自分が異世界人かもしれないということを、彼に打ち明けて助けを乞うという彼頼みのものだった。
バッグにはカメラやスマホ、ガイドブックや少女小説なんかが入っているから、ここが本当に異世界なら、異世界から来たって信じてもらうことは簡単だと思う。
問題は、この世界で異世界人がどう扱われているのかわからないってことだ。
いくら彼が優しくて親切でも、異世界人なんて胡散臭いものまで受け入れてくれるかはわからない。
それにこの世界のルールとして、異世界人は見つけ次第処刑、なんてこともあるかもしれない。
不安要素はたっぷりなのに、全て打ち明けるのは、悪手かもしれない。
だけどこの謎の事態に、私はひとりでうまく立ち回れる気はしなかった。
どうせなら、この頼りになりそうな人に、がっつり頼っちゃう作戦てわけだ。
人間、捨て身で頼られると、案外がんばっちゃうものだからして。
「あのね。驚くと思うんだけど、聞いてくれる?」
私は彼を逃がさないよう、そっと彼のマントを握った。
ほんとは彼の手を握りたかったけど、そこはまぁ、乙女の恥じらいってやつです。
「え?ああ?う……」
彼はわたわたと両手を動かし、私のほうを赤い顔で見る。
……あのさぁ。これ、ほんとに誤解しちゃだめ?彼が私のこと好きかもって。
この人、色が白いから赤くなると目立つんだよな。
恥らう美青年に見つめられるとか、ご褒美です。
まぁ今から異世界人だって告白したら、うじ虫を見るような目で見られるかもしれないけどさ。
緊張しつつ、彼の答えを待っていると、彼はこっくりとうなずいた。
私は、小さく息をついて、一息に言う。
「私、たぶん異世界から来たんだと思う」
読んでくださり、ありがとうございます。
熱、落ち着きました。
なにげに毎日更新できているので、今日も更新できてうれしいです。
読んでくださっている方のおかげだと思います。
ありがとうございます。




