105.長生きって素晴らしいですが
「癒し人って長寿な人が多いんだけど、フィー様はその中でも特別。あんまり長生きしているからご本人も実際の年齢は忘れられたそうだけど、500歳くらいじゃないかって。これって癒し人の中でも、異例中の異例なくらい長寿なんだよ!」
「500歳ですかー」
フィリップ様のことを語るダイアモンド様は、なんだかキラキラしていて、女子っぽい。
あー、これ絶対ダイアモンド様、フィリップ様のことが好きですよね。
応援したいけど、相手が500歳過ぎって…。年の差カップルにもほどがあるだろ。
素直に応援していいのか止めるべきなのか、私の常識ではわかんないわ。
私の相槌は曖昧かつ投げやりだったのに、自分の感情でいっぱいなダイアモンド様は私の気のない態度に気づかず、「そう!」と力強くうなづく。
「ふつう癒し人が長生きと言っても、やっぱり人の寿命って限られているんだよ。100歳から120歳くらいで亡くなる人が多いの」
「普通の人間よりは、ちょっと長生きってレベルですね。意外です。もっとものすごい長生きかと思っていました」
「癒し人が亡くなる前って、本人が自分の生を終えたいって思っていることが多いみたいなんだよね。そういうのって配偶者や子どもが亡くなった時とかが多いみたいで」
「あぁ。それは、なんとなくわかります」
私は少し前に亡くなった祖父のことを思い出していた。
お爺ちゃんもけっこう長生きだったけど、自分の友達とかがどんどん亡くなっていく中、だんだん気力が弱っていくのを感じていた。
自分だけ生きていても仕方ないなんて言って、私たち孫や子どもに怒られてたっけ。
「私たちがいるでしょ。まだまだ死んじゃダメだからね!」って返すのが定番でした。
でも癒し人の能力が遺伝しないなら、癒し人は自分の子どもや孫が先立つ可能性が普通の人よりずっと高いはず。
友も、配偶者も、子どもや孫も、自分が深くつながっていた人たちが亡くなってしまって…。
そりゃ幾つになっても友人も家族も増やせる。
だけど、その出会いの先はまた自分ひとりが残されることになるのなら、人はどこまで貪欲に生きることを望めるのだろう。
周りの人がどんどんいなくなる中、自分だけ生き残るって、私ならかなりキツい。
「じゃぁレイやダイアモンド様も、きっと長生きですね」
「んー。私たちがどれくらい長生きするかはわからないよ。癒し人でも40歳にもならずになくなっちゃう人もいるしね」
けっこう重い話を聞いたと思ったのに、ダイアモンド様はあっさり笑い飛ばした。
「そんなことより、だよ!フィー様の500歳くらいっていう年齢が、どれほどすごいかわかった?」
「え、ああ、はい。わかります」
そっか、その話をしていたんだっけ。
ぶっちゃけフィー様のことより、レイのことのほうが気になるから、話の発端がなんだったかなんて忘れていました。
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