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10.月が赤いのですが

おはようございます。

ちょっと風邪に負けそうです。

皆様もお身体ご自愛ください。

ざっくりとバッグの中の荷物を確認し、今後のことを考える。

手に持っていたパスポートや飛行機のチケットはなくなっていたけれど、バッグの中にいれていたものは、ぜんぶ無事だった。


……さぁ、これからどうしようか。

膝を抱えて考えていると、木の外から声がかけられた。


「待たせたな」


覚えのある声に、ほっとする。

彼が帰ってきてくれるって信じていたけど、それと実際に彼が無事で私を迎えに来てくれた嬉しさは、また別物だ。


「お帰りなさい」


ちょっと目じりに、涙がうかんでしまう。

そっと指で涙をぬぐい、笑って言うと、彼は木のうろの前に膝をついて、私のほうへ手を差し伸べてくれた。


私は彼の手に、手を重ねた。

彼はそうっと私の手を引き、木のうろから引っ張り出してくれた。


「どこも怪我していない?」


彼の姿をざっと観察する。

白皙の顔も、黒いマントをまとった体も、ぱっと見たところ、怪我はなさそうだけど、尋ねる。

すると男は、余裕たっぷりに笑った。


「ヨーダなんて、俺の敵じゃないって言っただろ」


「うん…」


あ、その顔やめてくれないかな。

年甲斐もなく、きゅんとしちゃうじゃないか。


「もうヨーダが森から出てくることってないの?私のせいで、街の人にご迷惑かけたくなくて……」


まぁヨーダがまだ出るって言われても、私にはなにもできないんだけどな。

街の人に迷惑かけたくないとか言っても、この男に倒してもらう以外、方法も手段も思いつかないんだけど。


なんだかなーと思いながら、男を見あげた。

男は、私の頭をなだめるようになでて、言う。


「だいじょうぶだ。上を見ろよ。もう赤い月の刻に変わってるんだ」


男に促されて、頭上を見る。

頭上に輝く月は、いちごのような赤い色をしていた。


「赤い……?」


呆然と、私は言う。

赤い月という言葉は、日本でもある。

だけどそれは、月がほんのりと赤く見えるというだけであり、こんなふうに本当に月が真っ赤に見えるということはなかった。


いや、それ以前に、これは本当に月なのだろうか。

色はもちろん、大きさや輝きも、地球の「月」とは異なる。

この大きさ、輝きは、むしろ「太陽」のようだった。


だいいち、月の色と、ヨーダの出現の間に、なんの関係があるんだろう。

私は混乱しつつ、月を見ていた視線を、男の顔に戻した。

……これは、いい機会かもしれない。

読んでくださり、ありがとうございます。


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