株式会社ニューワールド
異世界に来たことを実感しながらニコアの街を歩いていた。そうすると目の前に雑居ビルのような3階建てのビルがあった。ニコアの街をここまで歩いている中でビルは非常に珍しかった。その看板の2階に俺の就職先になるはずの株式会社ニューワールドの名前があった。
「すいません、転職サイトで応募しましたユートです」
そこにはどう見ても幼女としか見えない女の子が座っていた。
「話は聞いてます。どうぞそこに座ってくだちゃい」
その子はユートに椅子に座るように促すと奥からお水を持ってきた。
「ここまで大変だったでしょう。まずは飲んでくだちゃい」
「お嬢ちゃん、ありがとう。お父さんかお母さんはいつ頃帰って来るっていってたの」
ユートはニューワールドのニコア支店長がこの子の親だと思い尋ねた。
「お父さんもお母さんも王都にいますからすぐには来れませんよ。それがどうかちましたか」
「えっと、支店長に会いたいのだけど、いつ頃戻ってくるか聞いてるかな」
ユートがそう言った瞬間、幼女は机を叩いた。
「わたちが子供だからってお手伝いか留守番のままごとでもしてると思っていまちたね。わたち怒りました」
そういうと机から1枚の紙を取り出すとひと思いに破り捨てた。
そこには雇用契約書と書いてあった。
そしてユートを25万円相当で雇うとも書いてあったのだが、その紙は見事に破られた。
「ちょ、ちょと!」
「わたちはニューワールドのニコア支店長であり、人事担当役員なんでちゅよ。この紙あげるので出てってくだちゃい!」
-採用結果通知-
この度は、弊社にご応募ならびに面接に足を運んでいただきありがとうございました。採用にあたり慎重に検討を重ねてまいりましたが、残念ながら貴意に添えない結果となりました。
末筆ながら、今後の貴殿のご活躍をお祈り致します。
株式会社ニューワールド 採用担当役員 ロリィ
「お祈りメールってちょっと!もうチキュウの戻れないから文字通りホームレスになってしまいます。ロリィ様何卒・・・」
ユートは目に涙を溜め訴えた。
「この世界では獣人、エルフ、魔族など多種多様な者たちが共存。そしてときには戦ってる世界なのでちゅ。また上級魔法を使える者の中にはわたちの様に身体の成長がほんの少し遅かったりするのもいるのでちゅ。だからユート君がこの世界で頑張ってもらう前に知っておいて欲しかったのです」
話しをするとロリィ支店長は18歳で、この世界では概ね15歳位からは大人と見なされるようでれっきとした大人だそうで、また上級魔法も使えることからこの若さで役員扱いになっているそうだ。
「で、俺はどうなるのでしょう」
ユートが恐る恐る聞くとロリィは、また新しい紙を取り出した。
「本当でしたら、そちらの世界で25万円相当でとなってましたが、さっきの発言や常識を覚えてもらうための期間ということでこちらでいかかでちょうか」
-雇用契約書-
株式会社ニューワールドはユート氏を基本給1,000パルで雇い、当社の依頼によりユート氏が他社にて得た収入は折半とする。
尚、雇用条件の変更は半年おきに話し合うものとする。
株式会社ニューワールド 採用担当役員 ロリィ
「こちらでどうでしょう」
つまり派遣社員に近い形のようだが、基本給である1,000パルあれば1ヶ月生活するのには問題ないらしい。
ここで貨幣について説明を受けた。
通貨単位はパルと言われ、ガランド国以外でも通用する統一単価であるとの事だ。
町に入るときに支払った銅貨5枚というのは5パルとなるらしく、1パル=日本での100円程度に相当するらしい。
10パルになると銅札1枚=銅貨10枚となり、以下は100パル=銅札10枚=銀貨1枚
1000パル=銀貨10枚=銀札1枚 10000パル=銀札10枚=金貨1枚となるとのことだ。
この上にも貨幣はあるようだが一般的に見る機会はないだろうということで説明は割愛された。
また、雇用条件見直しだが、ユートが他社で稼げば稼ぐほどニューワールドにも金が入ってくる訳だが、他社で稼がなくても最低限支出は出ることになるので、半年おきに見直しとなり、ユートが結果を残したなら基本給を少し引き下げ、そのかわりに割合をユートに有利にしてくれることを約束してくれた。
話しをもう少し聞くと、派遣に近い会社も多くあるようで、条件が良くなかった場合派遣会社を渡り歩いたり独立して仕事場で自家雇用される事も多く、出来る人は有利な条件を選べる事になると説明してくれた。
「ではこの条件でいいですか」
ロリィの問いかけにユートは頷くとその契約書にサインをした。
ユートは仕事にありついた。