イケメン執事ともさもさな少女
「まったく、なんだっての・・・。」
初めて見た紫の鎖に縛られた俺は、けして狭くない乱雑な部屋を見回していた。
あの後、駆けつけた巻戒という男に縛り上げられて、今に至る。
巻戒というこの男、黒いタキシードといい執事らしい。
若いのは気になるが、執事としては優秀そうだ。
そもそも、俺は初めて執事なんか見たがな。日本に執事など、いるはずもないし。
印象はまぁ、言うまでもなくイケメン執事の気風が出ている。
もう、満載過ぎて自分が霞む。
そして、奥にもう一人。
なんか、ちょこちょこ弄っているもさもさ。
蓮麻零蘭という少女がいる。
恐らくは同世代だとは思うのだが・・・。
非常にこぢんまりとした身体、異様な髪がおかしな印象を与えてくる。
四肢は、やせ細っており貧弱だ。
髪はどれほど手入れをしていないのか、立ち上がっても床に付いてしまう。
さらに、臭い。
年頃の女性であるはずなのに、異様な臭いを出している。
このもさもさがさっきのイケメン執事を呼んだことから、これがお嬢様であると考察できるが・・・。
甘やかしすぎなのか、
少し変わっていると形容するべきなのか、
見当もつかない。
「まったく、なにが起きたのよ!暫く寝るからよろしく!戒。」
もさもさは、酷く憤慨して近くにあったベッド?の上に寝転がった。
俺はその姿をみた後、先程のイケメン執事が指を口元にやったのをみて、それに従いイケメン執事の後を追って部屋を出た。
部屋の外は、一風変わってお屋敷といえた。
隅々まで手入れが行き届いており、何故か緊張してしまう。
一室にて、互いに向き合って座った俺達は双方を注目しあう。
やがて、先にイケメン執事が口を開いた。
「いやはや、いきなりでありましたが失礼しました。今、紅茶を淹れましょう。」
この男、ジジクサイな。
そう思いつつも、暫くは口を閉ざした。
わずかな時間の後、イケメン執事は直ぐに紅茶をトレイにのせて戻ってきた。
紅茶を俺の前に置いたのに対し、俺は背を向け鎖を解いて欲しいと話すと彼は、そうでした。と笑みをこぼし、鎖を解いてくれた。
「さて、まずは自己紹介をするのが礼儀ですかね。私は蓮麻家、執事長を務めます。巻戒と申します。」
丁寧な自己紹介は、執事たる威厳や風格を感じさせた。
「俺は、塚里凜です。えっと、高校生です。後は特に無いです。」