婚約破棄シーンから学ぶ絶望感のある展開
「ローザ・スプワール、お前との婚約を破棄する!」
夜会にて、伯爵令息ダリウス・デラシオンが、婚約破棄を言い渡した。
艶やかな長い黒髪を持つ男爵令嬢ローザは、突然の出来事に愕然とする。
「ダリウス様、お待ちください!」
「お前にもう用はない。消えろ!」
ダリウスが強く言うと、ローザはしずしずと夜会会場から立ち去った。
それを見届けたダリウスは、自慢の金髪をかき上げ、高笑いする。
「ハハハッ! 婚約破棄ほど楽しいものはないな! 婚約破棄された女のあの絶望の表情が、俺に愉悦を与えてくれる!」
ところが――
「なにを笑っているのです?」
「……!? この声はローザか!?」
声がした方向を見ると、信じられない光景があった。
「ローザが……何人も!?」
なんと100人以上のローザが、夜会にやってきていた。
そのうちの一人が言う。
「今あなたが婚約破棄したローザなど、大勢いるローザのうちの一人に過ぎないのですよ。さあ、この数のローザを婚約破棄しきれるかしら……?」
笑いながら迫ってくるローザ軍団に絶望し、ダリウスは悲鳴を上げた。
「ひええええええっ……!」
絶望展開その1【倒した敵が量産型の一人に過ぎなかった】
***
「ローザ・スプワール、お前との婚約を破棄する!」
夜会にて、伯爵令息ダリウス・デラシオンが、婚約破棄を言い渡した。
ところが、ローザは平然としている。
「……ん? なんで平然としてるんだ?」
「ダリウス様、この世界のルールを知っていますよね。『貴族力』が高ければ、婚約破棄を無効にできるということを」
「ああ、もちろんだ。そして、俺の貴族力は伯爵令息としてはトップクラスの1万だ!」
ローザは唇に手を当て、笑い出した。
「フフフ……」
「なに笑ってやがる、ローザ!」
「せっかくですし、私の貴族力をお教えしましょう」
「ふん、男爵令嬢のお前は高くてもせいぜい3000か4000ってところだろ」
「私の貴族力は53万です」
「な……!?」
「つまり、あなたに私を婚約破棄することは絶対にできないのです」
「う、うあぁぁぁ……」
あまりの絶望的な差に、ダリウスは床に膝をつき、涙を流した。
絶望展開その2【敵の方が強さの数値が圧倒的に上】
***
「ローザ・スプワール、お前との婚約を破棄する!」
夜会にて、伯爵令息ダリウス・デラシオンが、婚約破棄を言い渡した。
すると、ローザは殺気をあらわにする。
「ならば……あなたを殺す!」
「……なにっ!?」
ローザは猛然と迫ってきた。
しかし、ここでダリウスのために頼もしい援軍が駆けつけた。
親友である伯爵令息ミカエル。
デラシオン家家令ハワード。
デラシオン家庭師アレク。
デラシオン家御者マテオ。
いずれも腕に覚えのある男たちである。
頼もしい四人が現れ、ダリウスはホッとするが――
「邪魔よ」
ローザの裏拳で、ミカエルは天井まで吹っ飛ばされた。
「ぶぎゃっ!」
家令ハワードがローザに突っ込む。
「おのれぇ! ダリウス様はこの私がまも――」
ローザに顔を鷲掴みにされ、ハワードは顔面を床に叩きつけられた。
さらに、アレクは窓の外まで蹴り飛ばされ、マテオは抱きしめられ骨を砕かれた。
「ミカエル! ハワード! アレク! マテオ! うわああああっ……!」
仲間たちを倒されたダリウスは絶望のあまり号泣した。
絶望展開その3【味方が次々に倒される】
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「ローザ・スプワール、お前との婚約を破棄する!」
夜会にて、伯爵令息ダリウス・デラシオンが、婚約破棄を言い渡した。
と同時に、体内で練り上げた婚約破棄パワーを、両手から一気に放出する。
それは巨大な光線となって、ローザに向かっていき、会場が揺れるような大爆発を起こした。
「す、すごい……!」
「さすがはダリウス!」
「あれではローザ嬢もひとたまりもないだろう……」
夜会出席者は凄まじい威力に驚愕し、ダリウスも勝利を確信する。
ところが、煙の中から――
「まあまあ、効きましたね」
「え……!?」
ローザはところどころ皮膚が焼け、ドレスが破れてはいるが、ほとんどダメージを受けていなかった。
「ですが、今のが必殺技だとするなら、ガッカリですね」
ダリウスにはもう何も残っていない。
「終わった……」
やれることといえば、絶望ぐらいのものであった。
絶望展開その4【最強の必殺技が通用しない】
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「ローザ・スプワール、お前との婚約を破棄する!」
夜会にて、伯爵令息ダリウス・デラシオンが、婚約破棄を言い渡した。
しかし、ローザは悲しそうな顔をするばかり。なにかをする気配はない。
ダリウスが眉をひそめる。
「おい、話を進めろよ。お前が俺に絶望的なことをしてくれないと、読者が楽しめないだろ。絶望展開その5、その6、その7……って続いていくんだろ。で、最終的に大きなオチがついて盛り上がるんだろ」
ローザは首を横に振った。
「もう……絶望的なことは、できないんです」
「できないってどういうことよ?」
「作者が書くのに飽きてしまって……。つまり、この話はもう……続きはありません」
「そ、そんな……!」
ダリウスは叫んだ。
「作者ーっ! 続きを! 続きを書いてくれ! こんなのあんまりだ! せめて、キリのいいとこまで書いて完結させてくれーっ! 『ダリウスたちの婚約破棄はこれからだ!』とかでいいから!」
しかし、答えが返ってくることはない。
ローザはシクシクと泣き、ダリウスは絶望のあまり絶叫した。
「こんなのあんまりだあああああ……!!!」
絶望展開その5【物語がエタる】
完
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