第82話 青い炎
夜風に当たってショウの酔いも醒めたのだろう。
ショウは落ち着かない様子でキョロキョロと辺りを見回しながら進む。
何を考えているかは分かる。
お礼参りを恐れているのだ。
この先で待ち構えているのは猛毒ネズミから知らされて知っている。
角を曲がった途端ショウは踵を返した。
そして退路にもチンピラが。
全部で40名と言った所か。
ショウは逃げたくて堪らないらしい。
相手の隙をキョロキョロと窺った。
そして、家の外に置いてある樽に登るとひさしに掴まって屋根の上に逃げた。
逃げの一手とはショウらしいな。
「友達は逃げたぞ」
「道化はこういう荒事には関与しないのが、浮世の掟」
「そんなわけにいくか。宮廷道化師だって、国が亡ぶ時は王と死を共にするんじゃないか」
「ごもっとも。ですが、芸人もやる時にはやるもので。警告はしましたよ」
「おい、袋にするぞ。いいか殺すんじゃない。逃げた奴の人質にするからな」
「へい」
俺は酔ったふりをした。
斬りかかってくるチンピラをヌルヌルと躱す。
「この野郎、変な動きをしやがって」
「先生、頼みます」
ひげ面のムキムキの男が指を鳴らしながら、動き始めた。
「悪いが、商売なんでな。【重撃】、【重撃】、【重撃】、【重撃】、【重撃】」
俺はその重たい連撃を受け止めた。
足は微塵も動いてない。
「くっ、こいつ」
「だから言ったのに。ショウの始末はショウに着けさせるつもりだったけど、こっちも火の粉は払わないと。【賠償】。ステータスオープン。ろくな物がないな。所詮チンピラと毛が生えた程度か」
「馬鹿にしやがって。【重撃】、何でスキルが発動しない」
「もういい死んでゾンビになれ」
サクッとチンピラを片付けた。
ショウはどうしたかと思っていたら、少し行った先で守備兵の一団を案内してきた。
「プリュネ、無事だったのか。チンピラ達は?」
「お金を払って勘弁してもらったよ」
「そうか。とにかく良かった」
「兵士さん、この金貨3枚で飲んでくれ。無駄足踏ませて済まなかった。ご苦労様です」
俺はそう言って金貨3枚を渡した。
守備兵を呼んでくるところはショウらしいな。
俺を見捨てて知らんぷりをしない所がらしい。
善人でもないし悪人にも成り切れない。
「やつら、ショウのことをつけ狙って来るぞ」
「来るかな。来たら嫌だな。俺、ほとぼりが冷めるまで魔法学園から出ない」
「学園に寮以外に、泊まれる場所があるのか?」
「研究室に入れば良い。で何か画期的発明をくれ。教授が揉み手して迎えてくれるような奴が欲しい」
まあ、手助けしてやってもいいかな。
「火魔法があるだろ。火魔法で相手の火魔法を包む。そうすると相手の火魔法が消える」
「火魔法で消去魔法を再現するのか。考えたことがなかった」
「でコツがあるんだ。酸素っていう人間が息をするのに必要な物質がある。これを積極的に減らすんだよ」
「やってみて」
「【火魔法、酸素収集、完全燃焼】」
「うわっ炎が青い」
「分かっただろう。この青い炎だって論文に書けるぞ」
「やってみる」
学園までショウを送り届けた。
さて、どうやって門番に入れてもらおう。
前に来た時は駄目だった。
「ショウ、お前の誇張する力が試される時だ」
「分かったよ」
門番にショウが歩み寄る。
「もう門は閉めた。帰れ帰れ」
「はぁー、これだから無学な奴は我慢ならん。世紀の大発明だというのに。もしこの発明を教授に伝えそこなって、一晩寝たら忘れていたら、誰が責任を取る」
「帰った帰った」
「明日、教授に大発明を見せて、喜ばれたら、お前を真っ先に首にしてやる。名前は?」
「カッチだ」
「覚えたぞ。俺を帰していいのかな。ああ、明日、首になるとは可哀想だ。プリュネ見せてやれ」
「【火魔法、酸素収集、完全燃焼】」
「青い炎、初めてみた」
「だろう、さあ首になるか選べ」
「分かった。教授を呼んで来る」
しばらくして、長い白髭を生やした教授がやってきた。
「まったくどいつもこいつも。で炎が青いんだってな。見せてみろ」
「【火魔法、酸素収集、完全燃焼】」
「ふむ、金属の粉を燃やしたというわけではないのだな。よかろう入れてやれ」
「ありがとうございます。徹夜で論文を書いて朝までにお届けします」
ショウが無事学園に入れたことを見送った。
しかし、俺の説明で論文が書けるのかな。
まあ、ショウのことだから嘘を並べ立てるのだろうな。
上手く教授に取り入るぐらいできるだろう。
一ヶ月ぐらいは、研究成果が出なくても追い出されたりはしないさ。




