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星灯の魔法使いと風の騎士

作者: mikosai
掲載日:2026/03/16

*世界の果てに星の光が届かない王国があった。

誰からも必要とされてこなかった星灯の魔法使いは、

風の精霊の騎士と出会い、人々に星灯を届けます⭐︎

短編小説となります♪


*今回は短編小説で、読み切りとなります♪


ーー


ーー



今は昔。


あるところに、星のない国があった。

月がかすかな光で夜の闇を照らしている。


その国は、世界の最果てに位置していて、

星の光が届かない場所だった。


光がなければ、魔物が集まってくる。

人の心には、闇が生まれる。

人々は怯え、人間の騎士達は国をいつも魔物から警戒し、剣を手に取る。


ーー平和が訪れることは、無かった。


ある夜だった。

王が城から外を見ると、国の城壁の外側の高い丘の上に、1人の黒いマントを羽織った青年がいた。


茶色の長い杖を手に、手のひらから夜空へと白い光を打ち上げた。


すると、


ーー国全体に、とても美しい星空が広がり、輝きを放った。


皆、息を呑んだ。


その星灯は魔を退け、神々しい輝きは、人々の心の闇を祓い、平穏をもたらした。


魔法使いの青年は、王へ言った。


魔法使いの青年「この近くの森へ、小さな小屋を建てて住まわせて欲しい。そのお返しに、毎夜星の光で、この国を守護すると誓う。」


王は頷いて、魔法使いの青年のため、森の奥に小さな小屋を建てた。


これが、数百年前のお話しである。


ーー


ーー


早朝。よく晴れており、森の空気は澄み渡っていた。鳥の囀りが聞こえ、森の中はすがすがしいほど穏やかだった。


森の奥深くにある、小さな木の小屋。

木で作られていて、質素だが1人で住むには充分な広さだった。


木の玄関口の前には、星型のランプが吊るされている。ランプの中には、仄かな光が瞬いていた。


この光は、魔を遠ざける呪いがかけられているため、悪意のあるものは、近づくことが許されない。


善意のあるものだけが、訪ねてくることが出来るのだった。


魔法使いの青年は、1人で暮らしていた。

部屋は一つしかなく、質素なベッド、真ん中には木のテーブルに椅子が二つあった。


そして、壁に備えられた木の本棚には、びっしりと魔術書や薬草学など、様々な本が立ち並んでいた。


その横に机があり、本が山積みにされており、火が消えた蝋燭の燭台、瓶やら研究書やらが乱雑に置かれていた。


羽ペンでたくさん書かれた紙が、山ほど積み重ねられていた。


机の上の棚には、瓶に入った草や光る水晶など、いろいろなものが置かれている。


魔法使いの青年は起きたばかりなのか、まだ眠そうにしていた。


白いシャツに、黒いズボン、茶色のロングブーツを履いている。


短い癖毛の白髪に、左右が金と銀色の瞳をしている。


顔立ちはとても整っていて端正だった。

年は、若いように見えるが、目の輝きは深く、

長年の叡智が読み取れる。


黒いローブやマントは、部屋のドアの横にしっかりとかけられていた。


魔法使いの青年は、棚から机に赤い平たい水晶を置いた。


それから、その上に水の入ったやかんを置く。


水晶は輝き、お湯はすぐに沸いた。


やかんを持ち、ティーポットにお茶を入れる。


小屋の窓を、コンコンと叩く音がした。


薄緑の目を持つ一羽の鷹が、窓を嘴で叩いている。


魔法使いの青年は、近づいて窓を開けた。


鷹は元気に飛び、部屋の隅の机に置かれた、

木の手製の止まり木に降り立った。


魔法使いの青年「…扉から入れ。リアン。」

と、低く掠れた声で言った。


朝だからか、魔法使いの青年は声が掠れていた。


止まり木に止まる鷹は、白い光を放った。


次の瞬間、鷹の姿は消えて、1人の背の高い美しい騎士が、小屋の中に立っていた。


騎士は腕を組んで、魔法使いの青年に微笑んでいた。


短い金髪を後ろに撫で付けていて、整った顔立ちに薄い緑の目が優しく輝いている。背は高く、細身でがっしりとしていた。


豪華な金と銀色の騎士服を纏い、軽装の甲冑を付け、白いズボンに、黒いロングブーツを履いていた。


腰には、立派な装飾の銀色の長剣が差してある。


リアン「ははっ。すまない。鷹の姿でしばらく居たものだから。…つい癖で。」

と、笑いながら言った。


魔法使いの青年は、机にもたれながら湯気を立てているカップに入ったお茶に口を付けた。


リアン「で、だ。…また依頼を持ってきた。特別な星灯を依頼してきている。…出来そうか?…ルミエル。」


魔法使いの青年は、名前を〝ルミエル〟と言った。


ルミエル「どういった光だ?」

と、ルミエルは金と銀の瞳で、リアンを見据えた。


リアンは、緑の目を少し悲しげに輝かせた。

それからルミエルを見ながら、言葉を続けた。


リアン「…どうやら、隣国で大きな戦争があったみたいなんだ。…急遽、弔いのための星灯を必要としている。」

と、ルミエルを真っ直ぐに見ながら言った。


ルミエルは、目を閉じてため息をついた。


ルミエル「…了解だ。少し大掛かりな星魔法になる。…だが、必ず…午後までには間に合わせる。」

と、星型の瓶を棚から取り、星型の黄色の水晶盤の上に置いた。


ルミエルは、色々な小さな水晶を瓶に入れ、さまざまな草をすりつぶしたり、呪文を唱えながら魔法を精製し始めた。




挿絵(By みてみん)




室内は、黄色や白の光が満ち溢れていく。


リアンは壁にもたれ、じっとその光景を眺めていた。


リアン「毎度思うが…幻想的だな。」

と、ルミエルに聞こえないくらいの声で呟いた。


午後の光が、森に差し始める頃。


ルミエル「…出来た。」


ルミエルの手には、手のひらサイズの星型の小瓶が握られていた。


星型の小瓶の中には、青と黄色や白の光が淡い光を放ち、揺らめいている。


夜空に翳すと、魔法によって星灯が美しく灯る。


リアンは、ルミエルから星型の小瓶を受け取った。


ルミエルは、少しだけ疲れた顔をしていた。


リアン「よし。受け取った。…私が届けてくる。夕方まで休んでてくれ。」

と、リアンはルミエルに優しく微笑した。


ルミエルの頭を、手でぽんぽんした。


それから一瞬で鷹の姿になると、星型の小瓶の紐部分を嘴に咥え、窓から空へと颯爽と飛び立った。


ルミエルは見送り、木でできた質素なベッドに横たわった。そして、すぐに目を閉じると、眠ってしまった。


星の魔法は、魔力をとても消費する。


星灯は、個人の注文によって、ルミエルが調節しながら調合する。


人々の悲しみを和らげたり、痛みを緩和したりなどの魔法も調合して適宜加える。


祝い事にも頼まれることはあるが、大抵は弔いのためだったりがほとんどだった。


ルミエルは疲れ切って目を閉じ、仰向けに眠ってしまった。


ルミエルは、夜空に星灯を灯す魔法しか使えない。


その為、ーー他の国では必要とされて来なかった。


魔法使いは、永遠に歳を取らない。

だが、その命は永遠ではない。

殺されれば、もちろん死を迎える。


この魔物で溢れかえる世界で、無力に近いルミエルが、ここまで生きて来られたのは、


ーーリアンのおかげだった。


ずっと昔。

ルミエルは、世界を旅していた。

どこへいく当てもなく、誰からも必要とされずにいた。


ーー孤独だった。


だが、ある森を歩いたときに、一羽の鷹に遭った。鷹は羽に矢を受け、傷付き道に倒れていた。


ルミエルは、その鷹を手厚く手当した。

薬草を調合し、折れた羽に木の枝を当てがい、必死に看病した。


しばらくして、ルミエルの看病で鷹は再び空を羽ばたけるようになり、元気になった。


そして、白く輝きを放つと、美しい騎士の姿になった。


ーーリアンとの出会いだった。


驚くルミエルに、騎士姿のリアンは跪いて言った。


リアン「星灯の魔法使いよ。感謝する。

私は、リアン。

風の精霊だ。…人間に矢を射られ弱っていたが命を救われた。…ルミエル。君に仕え守ると誓う。」

と、リアンは片膝をついて跪き、ルミエルに忠誠を誓った。


銀に輝く剣を掲げ、目を閉じ祈るようにする姿勢を取っていた。


ルミエルは、静かにリアンを見下ろしていたが、ゆっくりと頷いた。


ーーリアンは…まるで人間の騎士のようだった。


リアンの導きにより、星のない王国の存在を知り、ルミエルは現在に至る。


ルミエルは、初めて人に必要とされ、仕事を与えられたことで、


ーー自身の存在意義を、再確認することが出来たのだった。


リアンは明るく、いつも笑顔でルミエルに接した。


リアン「ルミエルは、物知りだな…。魔法使いは、みんなこんなにも…知識があるものなのか?」

と、感心した声でルミエルを見た。


ルミエルは、今まで人から褒められたことなどない。


他の魔法使いに比べて、圧倒的に出来ることが少なかったからだ。


ルミエル「いや。俺はただ、…知識を深めておこうと思っただけだ。」

と、ルミエルは淡々と答えた。


リアンは、部屋の隅で椅子に座り、剣の手入れをしていた。


リアンは、ルミエルの言葉を聞いて、

「そうか。だが、努力は裏切らない。ルミエル。…君はとても素晴らしい。」

と、ルミエルを見ながら微笑んだ。


ルミエルは、リアンにそう言われて目線を逸らした。


ルミエル「…たまたまこの国では必要とされただけだ。」

と、椅子に座りながら開いた分厚い本のページに視線を戻す。


リアンは、ルミエルを見て理解していた。


ルミエルがいままで、


ーー他の国で酷い扱いや差別に耐えてきたのだということを…。だから、ルミエルは、敢えて人を避けるようになったのだと…。


リアンは、ルミエルの隣へ来て、目線を合わせながら、言葉を続けた。


リアン「ルミエル。〝価値〟というのは、誰にも測ることは出来ないものだ。人間は、利便性で物事を決定づけてしまう。…だが、…それはとても勿体無い。ルミエル。私も、君と、君の魔法に…心から救われている。…君の星灯を必要とする人達も同じだ。」

と、ルミエルへ優しく言った。


ルミエル「…人間みたいなことを言うんだな、リアン。」

と、ルミエルはリアンの薄緑色の目を見返して言った。


リアンはその言葉に、すこしだけ困ったように微笑した。


リアン「…遠い昔、私は元々人間の騎士だった。」


ルミエルは、目を大きく見開いた。


ルミエル「えっ!?」


驚くルミエルの顔を見ながら、リアンは言葉を続けた。


リアン「もう遠い昔のことだ。…この国で、大きな戦争があった。…騎士として戦った。だが、戦場で倒れた。国を守るためなら進んで命は捧げる覚悟だ。…悔いなどなかった。」


リアンは、遠くを見る目をしながら続ける。


リアン「…だがその時、風の女神が現れた。女神が私を、風の精霊として生まれ変わらせてくれた…。」

と、リアンはルミエルに微笑んだ。


リアン「それからずっと、…この国を見守ってきた。」

と、リアンは立ち上がる。


しっかり整えられている、金髪が夕日に照らされ、薄緑の目が光を受けて美しく輝き、ルミエルに向けられていた。


ルミエルは、そっと本を閉じた。


ルミエル「…女神か。御伽話の中だけじゃなかったんだな。…リアンが、たまに人間らしい振る舞いをする謎が解けたよ。」

と、本を片付けながら言った。


リアンは、ルミエルの言葉に肩をすくめた。


リアン「そうか。…じゃあ、そろそろ定刻だろう?…今夜の準備にいかなくては。」

と、リアンがルミエルに言う。


ルミエルは、部屋の入り口にかけたローブを纏い、マントを羽織った。


ルミエル「…そうだな。行こう。」


リアンは、一瞬で白い輝きを放つと、鷹の姿に変わり、軽やかに羽ばたいて窓から外へと飛び立った。


ルミエルは、扉から外へと出た。

小屋の前の星型のランプが、淡く光り揺れながら、周りを照らしていた。


森は夕陽に包まれ、次第に薄暗くなってきていた。


右手を目の前に翳すと、どこからともなく茶色い長い杖が手に収まる。

杖の先端は星の形に煌めき、輝きを放っていた。


ルミエルの、聖なる星の灯は、


ーー悪意や魔のものを退け遠ざける。


鷹の姿のリアンが、上空から先導している。

ルミエルの頭上を飛び、周囲を警戒しながら旋回していた。


ルミエルは、夕暮れに包まれる森の小道をゆっくり歩いて行く。


森の動物たちは、毎日ルミエルが来ると小道の脇に来て、ルミエルと杖の星灯を眺める。


幻想的な、白と黄色に煌めく光は、見る者すべての心を穏やかにし、癒していく。


ルミエルは森を抜け、高い丘の上にやって来た。


夕陽が西へと沈んでいく。


ちょうど夕暮れから、夜へと変わる時間だった。


高い丘の上からルミエルは、空を見上げた。


暗い漆黒の闇がじわじわと、空全体を覆い尽くそうとしていた。


ルミエルは、短い白髪の巻き髪を風にそよがせ、黒いマントとローブをはためかせながら、空へと茶色の杖を掲げ、静かに目を閉じた。


ゆっくりと、集中して一言も間違えることなく呪文を唱える。


すると、杖の先から一筋の白い光の玉が、目の前に浮かび上がった。


ルミエルは目を開くと、右手で白い光の玉に手をかざし、空へと手のひらで送る動作をした。


白い光の玉は、フワフワと黒い空へと輝きながら浮かんでいく。


そして、高く舞い上がると神々しいほど強く輝きを放った。


次の瞬間、


ーー空には、とても美しく光輝く満点の星空が広がっていた。


王国全体を包み込むように、眩いほどの星灯が空を彩っている。


鷹の姿のリアンが空から、ルミエルの目の前に降り立った。


リアンは人間の姿に変わると、

リアン「ルミエル。お疲れ様。…本当に美しいな。」

と、ルミエルの隣で星空を見上げた。


ルミエルは、リアンをすこし見て、

ルミエル「いつもと変わらないだろう。」

と、静かに答えた。


リアンは笑って、

リアン「そんなことはないさ。毎日見ているが、…ルミエルの星灯の魔法は、本当に美しい。…私は好きだ。」

と、満足そうに腕を組みながら、ルミエルに微笑んだ。


リアンの薄緑の目は、星灯に照らされエメラルドのように輝いていた。


ルミエルは、その言葉に少しだけ笑った。

ルミエル「ふっ…。それなら良かった。」

と、ルミエルは言いながら、リアンを見た。


ルミエルの金と銀色の瞳が、星灯の下で、


ーー本物の星のように輝いて揺れ、まるで星のひとつのようだった。


2人は丘の上、星灯の下、守護され平和な王国を見下ろしながら、いつまでも美しい星灯が瞬く星空を見上げていた。


ーー


ーー




長文ありがとうございました☆

今後ともよろしくお願いいたします!!


読んでいただきありがとうございました♪

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