4 このお屋敷、なにか変。
ついに到着してしまった。
「わぁ……」
屋敷のでかさに思わず声が漏れる。
邸宅だけで、娼館がまるごと3つ入っても、まだあまりある広さ。
玄関ホールもでかい!
奉公人がずらっと並んでる。
アタシのみすぼらしくて、けばけばしい姿を、見られて……。
「すごいわパパ! 貴方の命令に従ってみんな待ってるわね!」
「ふふはは! 当然だ! 主人であるオレを待っていなければ、クビ! と伝えてあるからな!」
待っているのではなくて、待ち伏せなのでは?
でも、この屋敷のお嬢様になれば……アタシもこのひとたちに世話されて何不自由なく暮らせるのかな。
それにしても立派で広壮な玄関ホール。
きっと正面の大階段にある空っぽの台座に、あの青空の壺を飾ったら……さぞかし似合うだろう。
もし、万が一、ひょっとして。
このお屋敷のお嬢様になったら……あの骨董商を呼んで似合う丁度を整えてもらおう。
駄目だと判っているのに夢を見そうになる。
でも、それくらい許して欲しい。すぐ覚める夢なんだから。
でも、なんかこのホール……違和感。
なぜだろう。立派なのに……。
いつだったか、あの壺ヘンタイが言ってた。
『玄関ホールに飾られてるモノを見れば、その家のことはいろいろと判るもんだ』って。
アタシは、ドレスの上から、太ももをきつくつねった。
しっかりしなきゃ。
アタシの人生は負けが決まったゲーム。
逆転の目なんかどこにもない。
でも、それでも、せめて明日までは生きていたい。
改めてホールを見た。
違和感の元がわかった。
バカ1号と2号は泥船だけど。
このお屋敷も、多分、泥船だ。
やっぱりなんとかして逃げなきゃ。
並んでる奉公人たちの真ん中で、おずおずしてるお嬢様が、アタシの異母姉妹とやらなのだろう。
ちがうのは母だけなのかすらあやしいけどね。
金髪の美少女で、ほっそりとしてて、どこかはかなげで、おどおどしてる。
うちのママが舐めたことを言うのも判るわ。
だけどね。娼館でもそうだけど、こういうヤツって結構したたかなんだよねー。
「お父様……そのかたたちは……」
戸惑ったように言うお嬢様に大して、
「喜べキャロル! お前に新しいお母さんと妹をつれてきたぞ!」
オッサンオッサン。
市場で買ってきましたみたいに言うなよ。
ママは、やたらでかいおっぱいを、ぶるんと揺すって、
「おほほほほ。今日からわたしをお母様としてうやまいなさい」
いきなり!? めちゃくちゃすぎる!
そこはもうちょっと慎重に入って欲しかったよ!
ママがここまでアンポンタンとは予想してなかった!
いや、予想してたかもだけど信じたくなかった。
一瞬アタシは言葉を喪い、対応が遅れ。
お嬢様が口を開こうとしているのが、見えた。
まずい。
ここで、『この無礼者どもをとりおさえなさい!』とか言われたら――
お嬢様の口角が少しあがった。
あ、こいつ弱気女じゃなくて、『このバカども破滅させてやるわー。楽しいわー』の方か!
アタシ終わっ――
「……はい」
え?
ざわっとした。
奉公人たちが驚いてる。まぁアタシもだけど。
ここは「はい」じゃないでしょう「はい」じゃ!




