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ドアマットヒロインにすらなれないアタシは、うつくしい壺になりたかった。  作者: マンムート


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17 アタシの王子様はやり手!

 ようやく泣き止んで、彼の腕に包まれたまま。


「でも……それならなんで、アタシ助かったの……?」


「キミは、あのお屋敷にいなかった。いない人間は、乗っ取りには加われない。あの屋敷の奉公人も、葬儀に集まっていた親戚や寄子達もキミはいなかったと証言した」


「え、だって、アタシ、お嬢さんと……」


「当主が、平民に屈して、一族を売り渡そうとした……それを防いだのも平民の女の子だった……そんなのはあの一族の恥だ。だから、キミはあの場にいなかった。そういうことになったんだよ」


 そういうことになった。


 あそこにいる人たち全員(お嬢さんとママとバカ2号を除く)は口裏を合わせたんだ……。



「だけど、あそこで、アタシは……死刑だって……」


 アタシは、無理やり力づくで、お家乗っ取りの共犯にされた。


 口を封じるなら、あのままアタシを死刑にすればよかっただけの話だ。


 マックは、少しためらってから、


「……ボクは青空の壺を、あの一族のひとりに売ろうとしていた。前から少しつきあいのある人でね。その人は、青空の壺の価値は判っていなかったけど、当主の印みたいなもの、ってことは知っていたんだ」


「でも、壺を売ったのって、あれより前だよね?」


「その時には、彼との交渉を優先する、という約束をしただけだったんだ。青空の壺は高価だから、彼は金策をしなくちゃいけなかったからね。そこで、次の交渉の時、彼の家にある骨董や調度を鑑定して、それも代金の一部にしましょう、ってことにしたんだ」


「……その交渉のあいだに、アタシはあのお屋敷へ行った……そういうこと?」


 彼はうなずいた。


「ボクは、あのお屋敷に品物を収めに行ってキミが大変なことに巻き込まれていることを知った。そして彼もお嬢さんには当主の資格がなくて、自分にもチャンスがあることを知った。彼は是が非でもあの壺を手に入れようと決心していた。なんせ当主になろうって言うんだからね。つまり、ボクは、彼の足元を見られる状況になったわけだ」


 ニヤリと笑った顔も、好きだな、と思った。


「彼は妙によくしゃべったよ。お家乗っ取りを止めた女の子を死刑に追いやったことにうしろめたさを感じていたようでね」


「! その男がアタシを……」

 

 彼はうなずいた。


「巡察隊を呼んだのは彼さ。キミを迅速に始末してくれるようにワイロまで送ったそうだ。当主自らがお家乗っ取りに加担したなんて、外部に漏れたら恥だからね。ボクは、このままだと、キミが殺されてしまう、と知った。だけど、ここで焦りを見せたら不利になる。だから何食わぬ顔で交渉を続けたんだ」


 ドキドキして来た。


 アタシが助かる、っていう結末は知っている。


 でも、裏でこんな交渉をしてくれてたなんて!


 すごい!


「彼の持っている骨董の幾つかも代金に含めることで、だいたいの折り合いはついた。それでも、少し足りなかった。足りないようにしたんだけどね。そこで、なんとしても壺を手に入れたがっている彼にもちかけたんだ」


 足りないようにしたっていうところが、カッコいい!


 ちょっと自慢気になってるのも――


「かわいい」


「へっ!? え、なにが!?」


 いけない! 思わず心の声が漏れちゃった!


「それでそれで!? 話の続き聞かせて! どんな風にもちかけたの?」


「ボクは商人で、たまには、少々アコギなこともしてまして。だから、ほんのたまにですけど、いいことをしたくなるんですよ。少し値段を下げますから、その憐れな女の子があの場にいなかったことにしませんか、って。あなただって、哀れな平民の少女で、しかも、主家の乗っ取りの阻止をしてくれた恩人を絞首台へ送るのは、少し気が咎めてるんじゃないですか? ボクもあなたも、神様のもとへ行った時、『いいこともしてたんですよ』って胸張って言えるじゃないですか、ってね」


「それでそれで?」


「交渉は成立。キミは、あの場にいなかったことになった。いない以上、裁判で引っ張り出されることもない。裁判に引っ張り出されなければ、あの家の恥を証言することもない。罪になることもない。そして彼は少し安い値段で当主の印が手に入り。ボクはキミを助けることができたんだ」


「すごい!」


 アタシは、尊敬の念をこめて彼を見た。


 誰よりも、カッコよく見えた。


 王子様みたい。


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