砂の月38-2
夕食の時間となり、今日は神殿長であるおじい様以外は皆と一緒のご飯だって食堂の入口で執事に教えて貰った。おじい様は殆ど神殿にいるそうで、まだご挨拶もできていない。近いうちに会えるといいな。
中へ入ると一番乗りは日向お義兄様で、さっと席を立ちあたしの側まで来て手を取り、席までエスコートするねと言って案内してくれた。なんかカッコいい。そのままあたしの席の隣に日向お兄様は腰を下ろし、うちの料理人のオススメデザートは~と楽しい情報をあたしに教えてくれた。今日のデザートが楽しみだ。しばらくすると菊竜お義兄様と柚人お義兄様がお話しながら仲良く入ってきた。でもいつも柚人お義兄様が座っている席に日向お義兄様が座っているのを見て、無言でこちらに近づいてきた。
「日向兄様!そこは僕の席です」
「僕はここがいいから柚はそっちに座って」
「いやです! 」
「そんな我儘を言わないの」
「我儘なのは兄様じゃないですか!」
兄弟喧嘩勃発! えっとどうしたらいいの? 向かい側にお義父様、お義母様の席と空いている席が1つ、こちら側に空いている席が1つとあたしと日向お義兄様が座っている席。もしかしたら柚人お義兄様は菊竜お義兄様のお隣が良かったのかも!あたしは慌てて立ち上がって「日向お義兄様はこちらにお座りになって下さい。そうすれば柚人お義兄様はいつもの席に座れます。私がお義母様のお隣に行きますね」と席を変わろうとした。
「「そうじゃないんだよ」」
と二人が同時に喋ってあたしを引き止める。あれれ?とおろおろしてると菊竜お義兄様が冷たい目をして近づいてきて、「兄様は僕の席に、柚はそっちへ」と2人に指示を出し、あたしにはにっこり笑顔で「桜悠は真ん中に座ってね」と言った。そして自分はお義母様の隣の席に腰を下ろした。これでいいのかな?と両隣を見ると2人とも満足そうだったので問題ないらしい。そしてお義父様とお義母様もやってきてようやく食事が始まった。
お義父様が日向お義兄様のお仕事の様子を尋ねたり、お義母様が柚人お義兄様に今日1日の様子を尋ねたりとわきあいあいのご飯だ! 菊竜お義兄様が学び舎のお話をしてくれて、あたしはにこにこと笑顔だ。
「隣の席より顔を見ながら食べられる正面の席のほうが絶対いいのにね」
菊竜お義兄様がちょっと黒い発言をした。えっ!? って顔をして日向お義兄様と柚人お義兄様が菊竜お義兄様を見る。確かに話しやすいのは向かい側に座っているお義父様やお義母様や菊竜お義兄様とだ。 左隣を見ると「僕としたことが……」と敗北感に打ちのめされていた日向お義兄様が、右隣には呆然とした柚人お義兄様がいた。
「兄様はともかく、柚はもう少し周囲を見て先を考えるようにしないとね」
「はい。菊竜兄様」
「ははは。これでは誰が長男だかわからないな。日向は優秀なのに、自分が興味のあることになると周りが見えなくなるところがあるからな。小さい頃から……」
「あなた、そのくらいにしてあげないと日向が可哀想ですわ」
なんだかどんどん日向お義兄様の方からどんよりとした雰囲気が……な、なにか関係ない話を!と思いついた話をした。
「えっと、この家には動物はいますか?」
「動物?馬と犬がいるね。桜悠は動物が好きなの?」
と菊竜お義兄様が尋ねてきた。
「はい。女神様に動物とお話ができる力を頂いたのですが、なかなか練習する機会がないので……。その馬か犬に私も会えますか?」
「そうだ! 兄様、桜悠に乗馬を教えてあげてはいかがですか?そしたら馬と触れ合う機会になるのでは?」
「乗馬! 馬に乗ったことがないので是非教えてもらいたいです。日向お義兄様にお時間があればですけど……ダメですか?」
菊竜お義兄様のフォローのお陰でぐーんっと一気に上昇した日向お義兄様が明日乗馬を教えてくれることになった。やっぱり菊竜お義兄様の方が年上みたいだとか思ったけど、それは内緒。早く明日にならないかな。とっても楽しみだ!