表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
虹の宮  作者: りゅぬ
14/22

砂の月37

今日は出来上がった衣装を結さんが持ってきてくれる日だ。お義母様が同席なさるらしい。(れん)に頑張ってくださいと応援されたけれど、どういう意味だろう?


桂香(けいか)様、桜悠(おうゆう)様、おはようございます。衣装が出来上がりましたのでお持ちいたしました」

「急ぎでお願いしてしまって申し訳なかったわね」

「いえ。いつもお引き立てありがとうございます」

「早速だけれど制服から見せてもらえるかしら?」

「かしこまりました。桜悠(おうゆう)様こちらへ」


(れん)に部屋の隅に作られた仕切りの中に連れていかれる。神殿にも来てた女の子が2人がかりで今着ているものを脱がせて制服を着せる。自分で出来るんだけど……と思いながらも言われるがまま手を上げ下げしてお着替え完了。と思ったら結さんが呼ばれて袖の長さや身幅やスカートの丈など細かくチェックしていく。そしてようやく仕切りの外に連れていかれ、鏡で自分の姿を!と思ったら今度はお義母様チェックが始まった。お義母様の指示されるがまま、手を上げたりくるっとまわったり椅子に座ったりした。やっと満足したお義母様があたしを鏡の前に立たせて「とてもかわいいわ」と褒めてくれたので「ありがとうございます、お義母様」とあたしはにこやかにお返事をした。

そしてまた仕切りの中に連れていかれ違うお洋服に着替えさせられ……そんなことが5回を過ぎた頃、ようやくあたしは(れん)の頑張ってを理解した。これあと何着あるんだろう……。途中でお茶にしましょうと言われた時は終わったー!って喜んだけど、残りのお洋服も着てみましょうねと言われた時は遠い目になった。

やっと全ての試着が終わり、若干笑顔が引きつっていたあたしの隣で、次はこんな感じで、この色もいいわね、ドレスも後何着か作らないと……とお義母様と結さんが話しながら、時々あたしに「桜悠(おうゆう)はどちらが好みかしら?」と聞いてくる。「どちらも素敵です」と答えたら「じゃぁ両方にしましょう」と言われたので、それからは「私はこちらの方が好きです」と答えるようにした。またあの苦行タイムを考えると本当はもう十分ですと言いたいけれど……あまりにもお義母様が楽しそうなので心の中で言うのに留めておいた。



お昼ご飯の時間が来てやっと解放され、午後は桐樹(とうき)様とのお勉強の時間だ。今日のお勉強は通貨と数についてらしい。1枚1枚通貨をテーブルの上に置きながら桐樹(とうき)様が説明してくれる。

通貨の種類は、半銅貨、銅貨、半銀貨、銀貨、半金貨、金貨の6種類。半銅貨10枚で1銅貨、銅貨10枚で1半銀貨、半銀貨10枚で1銀貨、銀貨10枚で1半金貨、半金貨10枚で1金貨。平民なら金貨1枚もあれば家族4人が1年は十二分に暮らせるくらいらしい。まぁ金貨なんて普通に使うことはまずないみたいだけど。


「では、この銅貨を使って足し算引き算をやってみましょう。桜悠(おうゆう)様に1枚、私に1枚。2人で何枚でしょうか?」

「2枚です」

「そうですね。では桜悠(おうゆう)様が2枚、私が1枚で?」

「3枚です」

桜悠(おうゆう)様が4枚、私が1枚で?」

「5枚です」

「素晴らしいです。次は9枚使って練習しましょう」


しばらく硬貨を移動させながら、2人の持っている硬貨の合計を数えていった。


「大分慣れてきたみたいですね。これを硬貨がなくともすぐに答えが出せるように練習して下さい。慣れると2と4で6、6と3で9と簡単に答えが浮かぶようになります。では銅貨9枚を使って引き算のほうもやっていきましょう。桜悠(おうゆう)様に7枚渡すと残りは何枚になりますか?」

「2枚です」

「4枚渡すと残りは何枚ですか?」

「5枚です」

「そうです。この調子ならすぐに身につくでしょう。今日の宿題は9までの足し算引き算です。銅貨9枚をお貸しするので練習して下さい」

「はい。ありがとうございました」


神殿にいたころならこの後一緒にお茶をして……って流れだったけど、桐樹(とうき)様はまた明日参りますと言って帰ろうとした。えーもう帰っちゃうの? 帰らないで〜と見上げたら、はぁと小さくため息をついて座り直した。


桐樹(とうき)様はやはりそのような感じのほうが桐樹(とうき)様らしいです」

「申し訳ございません。先日日向(ひなた)様にお会いしたので少し気が緩んでおりました。桜悠(おうゆう)様と日向(ひなた)様は少し似ていらっしゃいますね」

日向(ひなた)お義兄様ですか? まだお会いしたことがないのですがどんな方なのですか?」

「……明日こちらに戻られるそうです」


と言ってにっこり笑顔でもうその話はしてくれるな〜という雰囲気を醸し出した。なんなんだろ?


「そういえば昨日は顔合わせでしたね。今年は18名と聞いておりますが……」


来た! やっぱり聞かれると思った! これはあたしがちゃんと覚えているかどうかの確認だ! ふふふ、昨日あたしは頑張ったのだ。女神様と似顔絵つきのリストを作ってくれた(れん)、ありがとう! あたしは顔合わせの時に並んでいた順番に顔を思い出しながら自信を持って答える。


「はい。第3侯爵家の香梅(こうばい)さん、第8侯爵家の 蜜季(みつき)さん、 第10侯爵家の 桃李(とうり)さん、第8伯爵家の凛花(りんか)さん、第24伯爵家の葉季(ようき)さん …… 」

「ちょ、ちょっとお待ちください。全員をもう覚えていらっしゃるのですか?」

「はい! 本日桐樹(とうき)が来られると昨日聞いていたので、顔合わせの後(れん)に教えてもらったのです。(れん)の描いた似顔絵はとってもよく似ているのです」

「そういうところも……なんでもありません。40日までにそちらも覚えなくてはならないので大変そうだと思い、宿題を9までの数字としましたが、変更しましょう」


銅貨1枚と半銀貨1枚を取り出し、20までの数字で足し算引き算の練習をさせるようにと(れん)に手渡した。えぇーーあたしまた余計なことをしちゃった!?

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ