星は拳に宿りて
「ぼ、僕は……!」
絞り出すように叫んだ。
「……ま、負けーー」
「ーーダメだよ」
静かな声が、届いた。
怒ってもいない。責めるようでもない。
ただ、冷たく……そしてどこか哀しげに。
「……ダメだよ、ルアン。
セントラクトは、“死ぬ”か“降参する”かした時点で、すべてを失うんだ。」
「……!」
「君が負けを認めたその瞬間、君が最後に強く思っていた感情が、勝者のエピルークに吸い取られる。
そして君は、その感情を二度と感じられなくなる」
ルキエルの銀の髪が風に揺れる。
「同時に、ぼくは……この世界から消える。
……それが、ルールだから」
その瞳に、感情の揺れは一切映っていなかった。
ルアンの鼓動が、一際強く鳴った。
熱い何かが、胸の奥を突き上げてくる。
誰も、自分を選んでくれなかった。
世界は、自分を見放していた。
でもーー
この神の子だけは、何も言わず、自分の隣に立ってくれている。
(だったら……)
視界に、ダリオの嘲笑が映った。
その瞬間、一筋の光が、拳に宿る。
あたたかい。懐かしい。
でも、それだけじゃない。怒りに似た熱が、脈打っていた。
そんなルアンを見て、ルキエルが静かに呪文を唱える。
「ーーRadiant Star Palm」
「その輝き……気づいてる?」
ルキエルが、わずかに笑った。
ルアンの拳が、星のように淡く、光を放っている。
「それが君の“属性”。名は“星”。
すべてを照らし、すべてを貫くーー無限の可能性だよ」
その言葉の意味を、ルアンはまだ理解していなかった。
けれど、この手の光だけはーー確かに、自分のものだと思えた。
拳を、振るう。
その先にいるのは、ダリオ。
(……ぼくは今、人を……殴るんだ)
初めての感覚だった。
怖さもあった。けれど、それ以上にーー揺るがない決意があった。
「Radiant Star Palm!!」
ルキエルの呪文と同時に、拳が閃光を放つ。
ドゴォォン!!!
爆音が轟き、石畳が砕ける。
ダリオの巨体が、大きく吹き飛んだ。
「ぐああああっ……!」
地面に叩きつけられ、血を吐きながら転がる。
「ご、ご主人様ッ!?」




