脱走☆実行中☆邪魔者が?!!☆
***
翌朝――
「よしっ!!いよいよ脱走作戦決行よっ!!」
リリアナは朝から絶好調だった。
「ノインの目を盗めれば、勝ち確だからっ!!」
「姫、そもそも寝起きにそのテンションなのすごいよね……」
ミレアが呆れ顔でつぶやきながら、ルアンとともにこっそり城の裏手へ移動していく。
一方――
廊下の影。
「……姫、またですね」
「ええ。今回はどんなルートか……記録しておきますか?」
「そうですね。では“第37回、早朝バレバレ大脱走劇”として記録しましょう」
ノインとセレドは、全てを把握しつつ、微笑を浮かべて背を向けた。
「気付かないふり、続行で」
* * *
「こっちこっちっ!この壁の裏の壁の奥の床の裏に、秘密の抜け道があるのよ!」
「……いや、そこ“裏”じゃなくて普通の床……」
「ちょっと静かにして、ルアン!大事な作戦中なのよ!」
バレバレな行動で、バタバタと廊下を抜け、庭に出た3人。
「ねえ……ほんとにこれ、成功するつもり……?」
「ふふふっ……見なさい、ノインの影も気配もないでしょ!? 完全に気づかれてない証拠よ!」
(真後ろの柱にノインいるけど……)
ルアンとミレアは心の中で突っ込んだが、言わないでおいた。
キャハハハハハハハ!!」
突然、空気を裂くような笑い声が響いた。
パタパタパタ、とハイヒールの音と共に現れたのは――
「まあまあまあ、朝っぱらからなにしてんのよ、リリアナぁ〜?」
艶やかに髪をなびかせる、第二王女・エルミナ。
その後ろからは、無言で冷たい目をした第一王女・アシュリーがぬるりと登場。
「……姉さんたち!?」
「何って、あんたのバカみたいな脱走ごっこがうるさくて起きたのよ」
「目覚まし時計の代わりにはちょうど良かったわ。ノイズだけど」
「なんなのその言い方!!」
「おはようございます……?」
ルアンとミレアがそっと頭を下げるが、
エルミナの目がミレアに留まった瞬間、鼻で笑うように言い放った。
「うわ、またこの子? 本当に……目障り。どこをどう見ても“不潔”って言葉がお似合いね」
「服はシワだらけ、髪は枝毛だらけ、肌は荒れてる。どこで拾ってきたの?野良犬……いや、野の花かしら。育ちすぎて雑草にしか見えないけど」
ミレアが一歩引いた。
「……っ」
「胸もぺちゃぱい。まるで板じゃない。目印つけなきゃ正面か背中か分からないわよね?」
「ぺっ……ぺちゃぱい……!?」
あまりにストレートな一言に、ミレアの顔が一気に真っ赤になった。
「な、なによそれ……っ!!言い方あるでしょ!?」
ショックと怒りと羞恥がぐるぐると混ざり、今にも爆発しそうなミレア。
その隣で、ルキエルがいつの間にか紅茶を口に運びながら、ぽつりと皮肉気に呟いた。
「……ミレア。君にもし、まだロギがいたらね……」
「……?」
「ぼくは“嫉妬”じゃなくて、その“羞恥と憤怒が混ざった感情”を喰らってみたかったよ。なかなかの風味だと思うんだ。さぞかし……濃い」
「うるっっさい!!」
ミレアがナプキンを丸めて投げる。ルキエルはそれをひらりとかわしながら肩をすくめた。
アシュリーもまた、冷たく言い放つ。
「顔もボロボロ、凄いわね、姿勢が最悪、立ち方がだらしない。品格がないのは……生まれのせいかしらね」
「……っ!」
「その程度の器に、姫の手が入るなんて……姫の品位が疑われるわ」
「ふふん。今日はこの子、私が美しくしてみせるわ!」
リリアナが胸を張って堂々と宣言すると、
「……はっ。できるものならやってみなさい。あんたに“あれ”が手なずけられるなら、の話だけど」
「ちょっとぺちゃぱい、失敗しても泣かないでね。それにリリアナ、あなたも姫としての立場、失うかもしれないけど?」
「深夜……気をつけることね。その醜い姿…寝てる間に切ってやろうと思ってるから。私たちがね」
「おほほほじゃぁまたお会いしましょう野蛮ども〜」
「少しでも野蛮じゃなく、せいぜい野の雑草くらいになってたらいいわねぇ〜」
そういい上の姉妹はその場を去っていった
その場の空気は凍り、ミレアとルアンは震えるほどの冷たい視線にさらされた。
(……最低……)
そう思った瞬間――リリアナが、すっとミレアの肩に手を置いて、微笑む。
「大丈夫。私は、私のやり方でやるから」
その声だけは、自信があるようにミレアを、励ました。




