強制☆お泊まり会♡とリリアナ姫のヒ♡ミ♡ツ♡
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「――で、今日は泊まるわよね?」
お茶会の後、ソファでクッションに埋もれながら、リリアナがルアンとミレアをにこ〜っと見つめる。
「えっ?」
ルアンとミレアは顔を見合わせる。
「いや、でも僕たち……王族の部屋に泊まるなんて、さすがに……ね?」
「うん……だって、今はノインの家に泊まらせてもらってるし……」
ルアンが苦笑しながらそう言った瞬間――
「はぁ!? なに言ってんの!?」
リリアナが急にムクっと起き上がる。
「私が“泊まれ”って言ってるんだから、泊まりなさーい!」
「え、ええええ!?」
「こっち側なんて、どうせ誰も来ないし!それにお風呂もある!ご飯もある!もちろん私専用の!ぜーんぶ使っていいから!!」
両手を腰に当てて、ドヤ顔で立ち上がるリリアナ。
ミレアがぽつりとつぶやいた。
「専用……って、なんかすごい単語が聞こえたような……」
「姫、さすがにそれは……」
困り顔でノインが言いかけた、その時。
ズイッ!!!
ゼロ距離でリリアナが顔を寄せる。
「あなたたちも!今日泊まりよ。強制ねっ!!」
「……っ」
ノイン、絶句。
セレドに助けを求めて横を見るが――
「……」
セレドはもう目を閉じて諦めた顔で、何も言わずうなずいた。
(この姫には勝てない……)
というわけで――
その晩、全員がリリアナの部屋で“強制お泊まり”することになった。
* * *
リリアナの謎ゲーム大会やら、豪華すぎるパジャマショーやら、全員を巻き込んだぬいぐるみファッション審査会やら、もう誰も止められなかった。
「ふふっ……もう、お腹痛い〜!笑いすぎた〜!」
クッションに倒れ込んだリリアナが、ぬいぐるみを抱えながら大の字に転がる。
ルアンもミレアも息を切らせながら、ソファの隅でくったりしていた。
「……姫って、どこまで体力あるの……」
「もはやちょっとした怪物だよね……」
「なーんか聞こえた気がするけど〜〜?」
リリアナがにやっと笑い、クッションをひとつ投げる。
「よしっ!じゃあ次は……」
「ま、まだ何かあるの!?」
「あるわよ? だって、ほら――」
ばっ!と立ち上がって、両手を広げる。
「ご飯、食べに行きましょ!!」
そして――
たっぷり遊び尽くしたあと、夜。
大きな食卓に、ずらりと並ぶ豪華な夕食。
一同はその迫力に圧倒されながらも、どこか不思議な違和感を覚えていた。
「……ねえ、リリアナって……普段、誰とご飯食べてるの?」
ルアンの何気ない問いかけに、空気が少しだけ止まる。
「え? いつも一人だけど?」
リリアナは、まるでなんでもないことのように、にこっと笑って答えた。
「ほら、私って“隔離”されてるし?『特別だから』ってことで、小さい頃からここなのよー!」
「……特別……?」
「うんっ」
リリアナはフォークをくるくると回しながら、あっけらかんと続ける。
「……この部屋にいれば、誰の目にも触れない。世間には“病弱”ってことで通ってるけど……実際はちがうの」
そう言って、リリアナはフォークを置いた。
「ほんとは、ただ――」
「“完璧じゃないから”よ」
「見た目も、思考も、性格も。全部この国の理想から外れてるって。だから“王族として見せられない”って」
「私の存在を知ってる人たちからすれば、私が表に出たら、王族の価値が落ちるらしいの」
笑いながら語るその横顔は、いつも通り明るかった。
けれど――明らかに、それは“強さ”だった。
「だからさ、こうして一緒にご飯食べてくれるだけで、私にとってはちょっとした奇跡なんだよ?」
リリアナがそう言って、にっこり笑う。
沈黙――みんなの胸にじんわりと何かが広がる。
と、その空気をぶち壊すように、
「……ってかミレアちゃん」
「へっ?」
突然リリアナがミレアを見て指差した。
「胸、ないわね!!」
「なななっ……はあああああああっ!?!?」
空気が盛大に吹き飛んだ。
「野に咲く小さな花みたい!まぁ、まだ小さいからそのうちでっかくなるわよ!!ドーンって!」
「な、なによ急に!?私こう見えて18よ!?」
「……えっ、18歳だったんですか!?」
横からノインの声が割り込む。
「てっきり……12歳くらいかと……」
「言いすぎだろっ!!」
「身長と……線の細さと……いや、表情が……あ、いや違う……その……」
ノインが動揺して手をばたばたさせてる中、
「……あらあらあらぁ〜〜〜〜〜?」
リリアナはにやぁ〜っと笑い、椅子の背もたれにふんぞり返る。
「じゃあもう……どんなに栄養とっても、胸は育たないわねぇ〜〜〜〜!!」
「ぐっ……!!」
ミレアの顔が真っ赤になり、拳をぎゅっと握る。
ぷるぷる震えながら、心の中で叫んだ。
(この国の姫……やっぱ嫌いっっっ!!!)
ルアンは苦笑いしながらスープをすするふり。
ルキエルは目を逸らして爆笑を我慢している。
セレドは……ガッツリ壁に向かって完全に魂を旅立たせていた。
――完璧主義の国で生きる、不完全で最高に自由な姫。
そんな彼女に、誰もが少しずつ引き込まれていく夜だった。




