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創世のルキエル  作者: ウルハ
リリアナ姫編
53/57

極秘

***


――紅茶の香り、ふわり。


陽の光が差し込む、優雅な昼下がり。


リリアナ姫は、窓辺のソファに腰かけ、静かに紅茶を持ち上げる。


目を伏せ、艶やかに笑い、小さく息を吸って――


「ふふ……やっぱり、紅茶は午後の光とともにね……」


指先がふわりと揺れ、小さく一口、お菓子を口に運ぶ。


とたんに、部屋中の声が響く。


「「「姫様ったら……!!」」」


「姫様はなんて……お美しいんだ……!」

「ぜひ僕と――いえ、私とお付き合いを!」

「禁断とは分かっていますが……女性じゃダメですか!?」

「ぼくたちはエピルークだけど……神との恋愛も、ありでは!?」


「だ〜めよ、私が美しいからって、みんな……ね?」

リリアナはほほえみながら、そっと髪をかきあげる。


「だ・め・よ。心は一つだけ……ふふっ」


 


――そんなロマンチックな妄想を抱いていた、リリアナ本人はというと。


現実のリリアナ姫:


「ぷっはーーーーー!! やっぱこの紅茶最高ッ!!」


ガッッッと勢いよくティーカップを飲み干す。


ついでに皿ごと菓子を抱え込むと――


「やっば!このクッキーも超うんまっ!しあわせ〜〜〜〜!!!」


ぽりぽり、もぐもぐ、ぼろぼろこぼしながら次々と口に押し込む。


 


「……うわぁ……」


ルアンは思わず目を逸らし、ミレアは微妙な顔で紅茶に手を伸ばす。


が――その瞬間。


「シュバッッッ!!」


閃光の如き速さで、リリアナの手がミレアの紅茶カップを奪い取る!


「……!!?」


「ありがとミレアちゃん!!あっつあつで最高!!」


ミレア、言葉が出ない。


 


ルアンも苦笑いで手元のクッキーに指を伸ばす。


が――


「それもらうわね!!」バッ!!


「えぇぇえええええええええ!?!?」


クッキーも瞬時に姫の口に吸い込まれる。


「ん〜〜〜っ!! し・あ・わ・せ!!」


リリアナは頬を両手で押さえ、目を閉じてとろけるような顔をしている。


「……ばっかバカしぃ〜……」


ルキエルはソファに寝転がりながら、呆れ気味に言い放った。


 


ようやく満足したのか、リリアナはぽんっと両手を打ち鳴らすと、急に姿勢を正した。


「――って、いけないいけない!妄想に浸ってたわ!」


突然現実に戻り、胸を張ってにやりと笑う。


「さぁて、今日はちょっと特別に……あんたたちにだけ、国家機密級の話をしてあげる!!」


「えっ?」


「えっ?」


 


ルアンとミレアが戸惑う中、リリアナはぐいっと机の下から一冊の分厚いノートを引っ張り出した。


表紙には《だっそうけいかく(超ひみつ)》の文字がデカデカと書かれている。


「……“脱走計画”……?」


「そうよ!」


ぱらららっとページを開くと、中には緻密すぎる地図、意味のわからない暗号、そして大量のスイーツのイラスト。


「わたし、もう我慢できないの!この部屋、退屈すぎて死ぬのよ!?ほら、だから今度こそ脱出しようと思って!」


「今度こそ……?」


「さあルアン、ミレア、ルキエル、協力して!!これは国家と胃袋の命運を賭けた、超重大任務なのよ!!」


「……胃袋?」


 


こうして――


とても姫とは思えぬお姫様の、王城お騒がせ計画が、今……始動する。


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