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創世のルキエル  作者: ウルハ
エルネア王国編~
42/57

『偏見に、刃を向けて』



玄関前には執事たちがずらりと二列に並び、礼儀作法の完璧な姿勢でノインを迎えていた。


そして、彼らの中央に立つ気品な見た目をした男女——ノインの両親が立っていた。


ノインが近づくと、母親がすぐに一歩前へ出る。


「ノイン!やっと帰ってきてくれたのね。もう、どれだけ顔を見ていないことか……」


「おかえり。やはり我が家の空気が一番落ち着くだろう」


父親もどこか満足げに微笑む。


だが、ノインの反応は冷ややかだった。


「あなたは優秀な子だから、家にいてくれたらどれほど助かることか」


「そうだ。姫の護衛ばかりで疲れているだろうに、たまには家に落ち着けばいいんだよ。家の跡継ぎとしてもな」


「……別に、ここで落ち着く気はないよ」


ノインの口調はピリッと張り詰め、両親の無邪気なおだてなど、まるで聞く気もない様子だった。


そのまま振り返り、後ろの三人に視線を向ける。


「彼らは、私の友人だ。今日から一週間、ここに泊まってもらう」


「……え?」


両親の笑みが、ぴくりと引きつる。


母親の目が、ルアンとミレアに向けられ、父も眉を僅かに動かした。


「……お名前は?」


母の問いに、ルアンは丁寧に頭を下げる。


「る、ルアンと申します。こちらはミレア。そして……」


「どうも、ボクはルキエル。ルアンの契約エピルークさ。よろしくね」


軽やかに微笑むルキエルに、執事たちが目を光らせる。


「……ご出身は?」


「……アナグナです」


その言葉が落ちた瞬間――


空気が、ざわっと揺れた。


「アナグナ?」「まさか……」「なんでまた……」


執事たちが目配せし、低い囁きが広がる。


その場に漂う偏見が、ミレアの表情を凍らせる。


そして――。


キィィン……


ノインが腰から剣を下ろし

硬い音が、石の床に響いた。


それだけで、場の空気が一変する。


ノインの声が低く、冷たく響く。


「……彼らは、私の友人だ」


ノインの声が変わる。温度が、ない。


その冷たさに、場の全員が反応を止めた。


「この屋敷に、一週間泊まってもらう。そう言ったはずだ」


母親が、わずかに動揺を見せる。


「でも、ノイン――」


「“でも”はない」


ノインは、剣から手を離さずに言い放った。


「私が見ていない間に、彼らに何かしてみろ。……その時は、容赦しない。家族でも、例外ではない」


石造りの屋敷に、ぴたりと静寂が落ちる。


両親も、執事たちも、何も言えなくなっていた。


「わかったね?」


両親が小さく息を呑む。


母親が一歩退き、父親は無言のまま目を伏せた。


「か、かしこまりました」


執事たちは深く頭を下げ答える


圧倒的な威圧に、誰も言い返せない。


その中で――ルアンとミレアは、ノインの背に守られていることを、はっきりと感じていた。


怖いほどにまっすぐで、でも、絶対に裏切らない何か。


(ノインさん…やっぱりかっこいい…)


(僕も思った…やっぱりこの人すごい…)


ミレアとルアンは小さな声でそう呟いた。


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