『星と光と屋敷』
◇◇◇
夕暮れの石畳を抜け、ルアンたちはノインに案内されて歩いていた。
「この国に来てから僕たちはノイン様に助けて貰ってばっかりでなんか申し訳ないな…」
それを聞いたノインは少し笑った
「そんな事当たり前だよ。
それに私のことは“ノイン様”じゃなくていい。君たちのほうが、きっとずっと苦労してきた。……友人同士なら、対等がいい」
「……ノイン、さん……」
ルアンは少し照れくさそうに言い直し、ミレアもこっそり後ろで頷いた。
「ふふっ、良い返事だ」
ノインが笑う。
ミレアはちょっとポッと顔を赤らめる。
その傍らを歩く執事――セレドは沈黙を守りながら、わずかに目を細めていた。
その少し後方。
ルキエルが、ふと横を歩くセレドに視線を向ける。
「……君、相当だね。見えるよ。ほぼ感情が揃ってる。そして、かなり強い」
くす、と笑みを浮かべる。
だがその目は、無邪気というより――どこか、得体の知れぬ“興味”で彩られていた。
「君とは、戦いたくないものだ」
セレドは足を止めず、淡々と応じる。
「ええ。ノイン様のお友達方ですから、傷つけたくはありません。ですが……」
ちらとルキエルに目を向け、静かに言った。
「……貴方様は、まだ感情は揃っていなくても“星”ですからね。相当な力でしょうに」
「ふふん、まぁね」
ルキエルは自信たっぷりに、どこか楽しそうに答える。
「ボクはエピルークの中でも、特別だからね。……感情がすべて揃えば、ボクは“良い意味で”この世界を変える神になる」
それを聞いたセレドは、ふっとだけ口元を緩め、しかしそのまま冷ややかに告げた。
「……貴方様は、“かなり残酷”ですな」
会話はそれきりだった。前を歩く三人は、そのやりとりに気づくことはなかった。
歩き進めると
街の中心からやや離れた高台――そこには、まるで城のように広がる屋敷の姿が見えてくる。
荘厳な門と、緻密に彫刻された白亜の外壁。その存在感は、ただの裕福ではなく、“血筋と歴史そのもの”を語っていた。
ノイン邸の正門が、重々しく開かれる。
その先に広がるのは、まるで王宮を思わせる中庭。噴水と花壇、幾何学的に剪定された植栽が夕日に照らされて輝いていた。
「……わ……わぁ……」
「すごい……ここ、本当に家なんですか?」
「うん。ちょっと広いけど……住み慣れると意外と普通だよ」
ノインは微笑みながらそう言う。
ルアンもミレアも、あまりの光景に言葉を失った。




