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創世のルキエル  作者: ウルハ
エルネア王国編~
38/57

『一口の幸せ、一瞬の終わり』

市場は、街の中央に広がる広場に面していた。


香ばしい匂いと人々の声。並ぶ屋台には焼き立てのパン、煮込み料理、串焼きや果物。色とりどりの料理が湯気を立てて並んでいる。


けれど――その賑わいの中に、ルアンたちの姿は浮いていた。


「……どこも、美味しそうだけど……」


「……こっち、安そう」


ミレアが指差したのは、鉄板で串焼きを焼いている小さな屋台だった。


ルアンはおそるおそる近づいて、数枚の硬貨を差し出す。


「これで、二本……いただけますか?」


店主は、ちらりと彼らを一瞥すると、あからさまに眉をひそめた。


「……外部者か。……ま、金さえ払うなら構わん」


ぶっきらぼうに言いながら、彼は焼きあがった串を二本、鉄板から抜き取って、乱暴に差し出してくる。


(……嫌そうな顔、隠す気もないんだな)


ルアンが受け取ろうとしたとき、ミレアがぽつりと呟いた。


「……ご飯は、売ってくれるんだね」


「最低限の取引だけは成立する、って感じかな」


ルアンも苦笑しながら頷く。


すると、背後からルキエルの声がした。


「まあ、流石にここでのたれ死なれても困るってことだろうね。異物でも、生きて動いてる方が“監視しやすい”ってわけ」


「……言い方」


「でも、間違ってないでしょ?」


ルキエルは肩をすくめながら、香ばしい匂いに鼻をひくつかせた。


「ふぅん。美味しそうだね、それ。君たちばっかりずるいなあ」


「食べないって言ってたくせに」


「僕は食べなくても生きてるけど、……こういうの、見るのは好きなんだよ」


ふと笑ったその声に、ミレアも少しだけ表情を緩めた。

「……ふふっ、やっと食べられるね」


「うん……でも、ここで食べるのはちょっと……目立つかも」


「あ……そうだね。ちょっと外れの方で、静かに食べようか」


二人は人の流れの少ない広場の端へと移動する。屋台の喧騒から少しだけ離れた石畳の陰――小さな木のそばに腰を下ろす。


「ね、冷めないうちに食べよう」


「うん。いただき――」


その瞬間だった。


「おい、何してんだ貧民ども」


声が降ってくる。


顔を上げると、数人の兵士を従えた若い男が立っていた。飾りのついた鎧、整えられた髪。身なりは整っているが、目に宿るのは軽蔑と傲慢。


「そんな汚い手で、王都の食べ物を触るな。吐き気がする」


男はにやりと笑い、ルアンの手から串焼きを奪い取る。


「っ……!」


紙に包まれたままのそれを、彼は無造作に地面へ叩きつけ、靴で踏みにじった。




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