No.2
――その瞬間だった。
「……ちょっと黙ってな」
女将の低い声が響く。
「何笑ってんだ、お前たち」
笑っていた男たちが、ピタリと動きを止める。
「立派な夢があって、傷つきながら、それでも歩いてる若い子たちをバカにして。……そんなに偉いのかい、あんたら?」
女将は受付の前からぐるりとホールを見渡し、ずしりと響くような声で続けた。
広間が、一気に静まり返る。
女将は、ゆっくりと歩きながら視線を投げつけた。
「お前らだって最初は、何か夢があったんだろ? それを忘れちまったのかい」
カウンターの上をゴツン、と拳で叩きながら続ける。
「文句があるなら出ていきな。そうじゃないなら、黙って飯食ってな」
さっきまで笑っていた者たちが、スッと目を伏せた。
空気が、静まった。
女将はふぅと息をついて、ルアンたちに向き直る。
「……あんたたち、偉いよ。ちゃんと自分の足で、前に進んでる」
そして、腕を組みながらニヤリと笑った。
「で、金は持ってるんだろうね? いくら綺麗事を言っても、タダで泊めるほど人が良くはないんでね」
ルアンは慌ててお金が入った袋を取り出す。
「は、はい!ちゃんとあります!」
「よろしい」
「普段はね、一人一泊1500《日本円で1500円》ルーンもらってる。でも、エピルーク連れなら割引しなきゃね。二人合わせてご飯付きで500ルーンってとこだ。いいね?」
「えっ……! あ、ありがとうございます!」
ルアンが素直に驚きながら頭を下げる。
「ちなみに――」
女将がちらりとルキエルを見て、口元をニヤッとさせた。
「その白髪の子も、食事をするんならプラスで50ルーン。……どうする?」
すると、ルキエルは腕を組んで、ふんっと鼻を鳴らした。
「ボクは別に、食べなくても平気だから」
「ふふ、そうかい。じゃあ500ルーンちょうだいな」
ルアンは素直に袋から銀貨を取り出して手渡すと、女将はそれを受け取って頷いた。
「よし。きな、あんたらの部屋に案内するよ」
そう言って、女将はカウンターから出てくると、大股で廊下へと歩き出す。
「ついておいで。そんな華奢な身体じゃ、ちゃんと休まないと明日倒れるよ」
「は、はい……!」




