ノインとセレド
そのとき――
「そこまでだッ!!」
鋭く、凛とした声が森に響いた。
パカラッ、パカラッと蹄の音が近づく。霧を割って白馬にまたがった青年が現れた。
銀白の制服に身を包み、背筋を伸ばし剣を構えるその姿は、まさに騎士そのものだった。
「なっ……あいつは……!」
盗賊たちが一斉に顔を引きつらせる。
「……かっこ……」
ミレアが思わず呟いた。
「え、ちょ……あたしも今、同じこと思った……!」
姫も鼻水を垂らしながらぽかんと見惚れていた。
白馬の青年は馬を下り、冷静な声で一言。
「君たちは……下がっていて」
その言葉だけで、場の空気が一変した。
彼の傍らに、黒い燕尾服に身を包んだ、まるで執事のような老人がぬっと現れる。
「……ご命令を、ノイン様」
エピルーク――セレド。
盗賊たちは動きを止めた。
「ひっ……やばい、……!」
「に、逃げろぉぉ!!」
あっという間に盗賊たちは霧の中へと消えていった。
残されたのは、倒れ込みながら深く安堵するリリアナ姫。
「は〜〜助かった〜〜〜!!ありがと〜〜!」
そして、ミレアとルアンが改めてノインに頭を下げた。
「本当に……ありがとうございました」
青年――ノインは、剣を収めてから柔らかく微笑む。
「気にしないで。僕はこの国の“護衛騎士”だからね。姫様のお守りも、僕の役目さ」
そう言って、後ろで鼻をずびっとかんでいた姫を見やる。
「ご紹介遅れました。彼女はエルディア国の第三王女、リリアナ様。……そして、僕はその護衛騎士、ノインです、そして彼は私のエピルーク、セレドです」
そう言うとセレドは静かにお辞儀をする。
リリアナはズビッと鼻をかみつつ、どや顔。
「いや〜〜本当に命拾いしたわ〜! あっ、そうだ、あなた達名前は?」
「ルアンです。こっちはミレア、で、これが僕の契約エピルーク、ルキエル」
「……あの。君たち……もしかして、アナグナの出身?」
その問いに、ルアンとミレアの表情が少し曇る。
だが、ノインの顔に偏見の色はなかった。
「ごめん、嫌な思いさせたね。でも安心して。僕は出自よりも、その人の“行動”で判断するから」
リリアナも笑いながら手を振った。
「そうそう! あ〜あなたたち、あの国の人なのね! だからそんな見た目なんだ〜〜!!」
「……え?」
姫は悪気ゼロ。
「いやほら、褒めてるんだってば! 見た目とか雰囲気が、あっちとはちがって、なんていうの?こう……生命力って感じ!ほら、野性味あるっていうか!」
「……姫様、フォローになってません」ノインが小声で突っ込んだ。
ルアンたちは微妙な空気になりながらも、苦笑で返す。
「ま、まあ……」




