森が終わらない
そんなやり取りの中、空が群青へと染まり始める。
焚き火の炎がぱちりと小さく弾けたころ、ルキエルがぽつりと呟いた。
「……てかさ」
ルアンとミレアが顔を向ける。
「エルディア国って、もう過ぎてるんじゃない? ずっと森ばっかで飽きたんだけど」
その顔は心底退屈そうだった。
「なに言ってるんだよ、ルキエル」
ルアンが苦笑しながら答える。
「今歩いてるのはエルディアの外側の山林ルートだよ。僕たちアナグナの市民は、国境から正面突破なんてできないからさ。だから……このまま次の国まで行くには、森を迂回して歩き続けるしかない。……あと一ヶ月はかかると思う」
「…………は?」
ルキエルの表情が、きれいに固まった。
「……えっ、まって。一ヶ月って、三十日ってこと? ずっと……この同じ景色? 同じ緑、同じ木、同じ鳥の鳴き声……ってこと!?」
「まあ、そうなるかな」
ルアンがあっさり頷くと、ルキエルは頭を抱えた。
「ボクそんなに忍耐強くないんだけど!? 芸術は多様性! インスピレーションが死ぬ!!」
ミレアがクスッと吹き出し、ルアンもこらえきれず笑う。
「じゃあ、インスピレーションを鍛える旅だね」
「ぐぬぬぬぬ……! ルアンまで敵に回ったぁ……!」
嘆きの声を上げるルキエルの後ろで、森の木々がそよそよと揺れていた。
こうして三人の旅は、“まだまだ森の中”で、今日も一歩進んでいく――。




