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創世のルキエル  作者: ウルハ
第2章~毒と嫉妬。ロギとミレア編~
22/57

『“嫉妬”を超えて』

ぽろりと零れた、一粒の涙。


ミレアは、自分でも気づいていなかったように、はっとした表情を浮かべた。


「……なんで……」


震える声。肩がかすかに揺れている。


「なんで……君なんかの言葉で、私……」


指先が、じりじりと土を掻いた。膝をついたまま、ミレアは前を見据える。


「ずるいよ……君ばっかり……!」


その声には、さっきまでの怒りや嫉妬とは異なる、もっと素直で、もっと脆い感情がにじんでいた。


「私……ほんとは、ずっと……」


「……気づいてほしかったんだよね」


ルアンが、静かに言葉を重ねる。


ミレアの目が揺れる。


ロギがそっとミレアの背中に身を寄せ、小さく囁いた。


「オイラ、ミレアのそういうとこ……ずっと見てたよ。

だからさ、もう……伝えていいんじゃない?」


「……うるさい……ロギは……」


呟きながらも、ミレアの肩から力が抜けていく。


もう怒ることもできず、ただ感情が崩れ落ちるのを止められなかった。


「……もう……やだよ……」


ぽつりと、彼女はつぶやいた。


「独りは……やっぱり……さみしいよ……」


ルアンは、そっと歩み寄り、やさしく手を差し出す。


「だったら、僕と友達になろう」


その手は、小さく震えていた。

けれど、そこにこもった温もりだけは、本物だった。


ミレアは、うつむいたままその手を見つめて――


そして、ほんの少しだけ、その指先がルアンの手に触れた。


その瞬間。


ルキエルが、静かに手を掲げる。


「……ありがとう。いただくよ」


ふわり、とミレアの胸元から黒紫の欠片の粒が浮かび上がる。


黒紫に濁った、けれど美しく揺れる“感情”。


「“嫉妬”……君の中で、もっとも濃かった感情だ」


それは、ゆっくりとルキエルの中へ吸い込まれていく。


「……ごちそうさま」


感情が吸収されたその瞬間、ミレアの身体がぐらりと傾ぐ。

ロギがすぐに肩を支え、心配そうに叫んだ。

「ミレアっ!? だ、大丈夫か!? なんか変な感じしないか!?」


ミレアは目を閉じ、小さく、けれど確かに頷いた。


「……すごく変。けど、少しだけ……軽くなった気がする……」


ロギは、ふにゃっと安堵の笑顔を浮かべる。



「そっか、なら……オイラも、安心だな……」


そしてロギは、ルアンとルキエルを振り返ると、満面の笑みで叫んだ。


「お前ら、ミレアのこと……よろしくな!!」


きししっと笑って、ロギの身体が光に包まれていく。


「……ロギ……?」


ミレアが呟いた瞬間、ロギの姿は霧の中に溶けるように消えていった。


残されたのは、静寂と、あたたかい余韻だけだった。


ミレアは、震える肩を抱えながら、ロギが消えていった場所をじっと見つめていた。

ルアンはその隣にそっと座り、何も言わずに見守る。


ルキエルが、いつものように静かに笑った。


「うん。ようやく……届いたみたいだね」


そしてルアンは、そっとミレアに声をかけた。


「僕も……これからは、君のことちゃんと見てる。ロギとの約束でもあるしね。

……友達になろう、ミレア」


ミレアは一瞬だけ驚いたような顔をして――


そして、恥ずかしそうに目をそらしながら、小さく頷いた。


朝の光が差し込み、森の霧が少しずつ晴れていく。


嫉妬に囚われていた少女の心に、小さな“繋がり”の灯がともった。




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