『届かない声、叫ぶ心』
嫉妬のオーラが、霧と朝露の森を歪ませる。
ミレアの手が、震えるほどの怒りに満ちていた。
その手を、ロギのオーラが絡め取るように包み込む。
「ロギ……ッ!」
「やっちゃおう!オイラたちの“もやもや”、ぜんぶぶつけちゃえ!!」
ロギがぽよんと跳ねながら、ミレアの背に吸い込まれるように重なる。
黒紫のエネルギーが彼女の全身を這い、嫉妬の感情が毒のように実体化していく。
「……ずっと見てたんだよ、君のことなんか……毎日、ずっとっ!!」
叫びと共に、ミレアの足元から無数の蔦のようなオーラが吹き出した。
それは彼女の技ーー
「《Venom Grasp》!!」
捻じれたオーラの触手が空間ごと引き裂きながら、ルアンに襲いかかる!
「うわっ……!」
ルアンは寸前で後ろに跳ねてかわすが、裾を一筋掠められた。
ジリ、と焦げるような痛みが走る。
ルアンは切ない顔でミレアを見る…
「なんでそんな目で見るの……!かわいそうって思った顔……やめてよ!!
……見てほしかっただけ……ただ、誰かに見てほしかっただけなのに……!」
「ミレア……!」
ルアンの目が揺れる。
その瞳に浮かぶのは怒りではなく、明らかな戸惑いと、悲しみだった。
拳を握る。だが、それを振り上げられない。
目の前の少女の叫びが、あまりにも本音で、
あまりにも痛々しかったからだ。
その一瞬の迷い――
「油断したね☆」
ロギの声と共に、ミレアの嫉妬の触手がルアンの足元に伸び、地を砕いた!
「っく……!」
衝撃で体勢を崩すルアン。
倒れこみながらも、すんでのところで拳に星の光を灯す!
《Radiant Palm》
星の閃光が、地面を照らす!
一閃。ミレアの攻撃を弾き飛ばすように、ルアンの拳が地を叩いた。
吹き飛ぶオーラ。ぶつかり合う感情。
それでもミレアは、立ち上がる。
「……まだ、終わってない……!」
再び彼女の身体に黒紫の気配が巻きつく。今度は体から霧のように染み出し、辺りに充満し始める。
「《Toxic Veil》……!」
視界が濁る。森の空気が、じわじわと“毒されて”いく。
「君にだけは、絶対に負けたくないッ!!いじめられてても、蔑まれててもっ存在があった!!!」
ルアンは、真正面からその痛みと感情を受け止めようと立ち上がる。
「理不尽すぎるよ…」
(でも……)
「……なら、僕も……受け止めるよ」
拳に、再び淡い星の光が宿る。
「君の気持ち、ちゃんと……向き合うから……!」
感情と感情のぶつかり合いは、まだ終わらない――。