『孤独に手を伸ばした日』
(……そんな……!)
冷たい街の医者の声が耳に残っている。
小さなミレアは、金もない手で、必死に訴えた。震える声で。
でも誰も、振り返らなかった。
家に戻ったときには、もう間に合わなかった。
おばあちゃんは、その夜、静かに息を引き取った。
大好きだった人は、二度と目を開けなかった。
お葬式なんてできない。だから、埋めた。ひとりで。森の小さな丘の根元に。
(おばあちゃんっ………。)
声が出なかった。
涙だけが止まらなかった。
誰も見ていない森の中で、少女はずっと泣き続けていた。
そんなときだった。
「……やぁ」
背後から、不思議な声がした。
振り向くと、そこには紫色の、小さく丸っこい異形の存在がいた。
「君、泣いてるの? なんでそんな顔してるの? ……あっ、もしかして、ひとりぼっち?」
ミレアは、息を飲む。目の前の存在が、何者かもわからないままに。
「……誰?」
「えへへ、オイラ? オイラはロギ! ……えっと……そ、その、オイラ、すごい力があるんだよ! 君の……願いを、叶えてあげられるかもしれないの!」
「……願い?」
「う、うんっ。たとえば……ずっとひとりぼっちじゃなくなるとか!」
ミレアは、ほんの少しだけ、顔を上げる。
「……ひとりじゃ……なくなるの?」
ロギは、胸を張って(?)にこりと笑った。
「うん! オイラが、ずっと一緒にいるよ!」
その言葉に、ミレアの心の中で、何かが音を立てて崩れ落ちる。
(……一人ぼっちにならないなら……)
その“願い”は、静かに形になり――契約が結ばれた。
——現実へ。
風が渦巻く。嫉妬のオーラが、ミレアとロギの周囲を支配していた。
ミレアの瞳が、ルアンを射抜くように睨む。
「……ずるい……! 私から、何もかも奪おうとしてくるなんて!!」
その叫びは、嫉妬と孤独に満ちた、深い絶望の声だった。
ロギがミレアの肩にぴょこんと乗って、ふにゃっとした笑顔を浮かべる。
「ねぇミレア……ちゃんと、オイラが守ってあげるからね! でもね……あの子、ちょっとだけ強そうなの。油断しちゃダメだよ!」
ミレアは、ぎり、と奥歯を噛んだ。
「……わかってる。ロギ、いくよ……!」
そして――
星と嫉妬の光が交差する戦いが、いま、始まる。