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創世のルキエル  作者: ウルハ
小話
13/57

エピルーク


森の中を進む道は細く、湿った落ち葉が足元に絡みついていた。

空はもうすっかり夕暮れ。木々の間から差す薄明かりは頼りなく、冷えた風が肌をかすめる。


「ねぇ、ルキエル……森、広いし……このまま夜になったら、どこに何がいるか分からないし……。

とりあえず、このあたりで……野宿、するしかないのかな」


「さあ? 僕に地図はないし。君の世界ってわりと不親切だねぇ」


ルアンは少し困ったように笑った。


そんな穏やかなやり取りの中だった。


森の奥から、不意に男たちの笑い声が響いた。


「へっへっへ……いたぞ、エピルーク持ちのガキ!」


ルアンがびくりと肩を震わせる。


茂みをかき分けて現れたのは、ボロボロの革鎧を身にまとった盗賊たち。

3人。顔には傷、目はギラつき、剣を手にしてニヤリと笑う。


「なあお前……その隣のやつ。エピルークだろ?」


ルアンは小さくうなずいた。

男の目がギラリと光る。


「やっぱりな! なら話は早ぇ。

お前を殺せば、そのエピルーク……オレのもんになるってわけだ!」


「え……?」


ルアンの背中に、ぞわりと冷たいものが走る。


「エピルークを手に入れれば……オレはこの世界を支配できるッ!」


盗賊の取り巻きが笑いながら肩をすくめる。


「親分、マジっすか? オレにも分け前頼みますよー」


「ははっ、全員で殺れば平等だ!」


ルアンは後ずさり、震えながらルキエルの方を見る。


「ぼ、僕が……殺されたら……ルキエルは……」


頭の中が真っ白になる。

視線がルキエルに向く。


「僕が死んだら、君は……あの人たちのところへ行くの……?」


パニックに沈むルアンに対し、ルキエルは静かに溜息をつき口を開いた。


「説明するね。ルアン、ちゃんと聞いてて」


その声音は、いつになくまっすぐだった。


「セントラクト同士が戦って、“敗北する”か、“敗北を認めた”場合。

そのとき、契約者は“もっとも強く抱いていた感情”を奪われて、

その感情は勝者のエピルークに取り込まれる。

そして、敗者のエピルークは、その場で消滅する」


「……!」


「そして敗者が死亡した場合は、感情は取れないし、エピルークは消滅しない。

代わりに、そのエピルークは新たな契約者を探しにいく。

君も、ダリオとヴェイサのときに見ただろ?」


ルアンは小さく息を呑んだ。あの時の光景が脳裏に蘇る。


「ちなみに……エピルーク持ちじゃない人に負けても、感情は奪われないし、エピルークも消えないし、君から離れることもない。

だから、君たちがどれだけ頑張っても、ぼくは契約しないし、ルアンの感情も奪われないよ」


「なっ……なんだよ、それ……」


先頭の盗賊の顔から、みるみるうちに血の気が引いていく。


「ど、どうしますか……親分……」


後ろの部下がぼそりと囁いた。


「見た感じ、こいつ……もうボロボロっすよ?

金目のものもなさそうだし、そもそも貧弱だからといって相手エピルーク持ちっすよ?」


盗賊のリーダーは、ルアンのボロボロの衣服と傷だらけの顔を見て舌打ちする。


「……チッ、今回は引くぞ。

無駄に怪我しても仕方ねぇ……ずらかれ!」


「了解っす!」


「ちぇー、せっかくの神様チャンスだったのによお……」


そう捨て台詞を残して、盗賊たちは森の奥へと姿を消していった。


静寂が、再び森を包んだ。


ルアンは、その場に崩れるように座り込む。


「よ、よかった……」


ルキエルはいつものように肩をすくめ、にこりと笑った。


「ふふ。命拾い、ってやつだね」


「命拾いどころか、心臓止まるかと思ったよ……!」


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