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終焉のジュメール  作者: 馬の骨
第一章 サイハテ
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第一章 第三話 転移は突然に

「てめぇ……!!」


 平気で弱みに付け込んでくる。自然に拳を握る。


 親父の病気を治す?確かめようがない話だ。


 クソ・・・全て確かめようがないなら結局いうことをきかざるを得ないのか。


 悪魔もこちらの反応を伺っているのか何も話さない。


 数分の沈黙が続き、俺の足りない頭で考えてみたが、答えがでなさそうだということだけはわかった。


 ……もうわかった。前向きに考えよう。


「わかった。この話をとりあえずは受け入れるよ。……で?具体的に世界を終わらせるって何すればいいの?勇者でも倒せばいいのか?」


 俺は投げやりに聞いた。


 こいつは悪魔だから視点は間違ってないはずだ。


「同意いただきありがとうございます。同意いただけないと術は機能しないものでしてね。」


 悪魔は不気味な微笑みを浮かべ、感謝した。


 なんで感謝するんだ。同意したわけじゃない。他に選択肢がないだけだ。俺が少し顔をしかめると、また優しく話し続ける。


「先ほどのあなたの疑問についてですが、少し違います。簡単に言えば、魔王と勇者を倒してほしいのです。」


 全然簡単じゃなかった。いや、そう言う意味じゃないんだろうけど。


 しかし、冗談で聞いたつもりが意外にも的を得ていたようだ。勇者だけでなく、魔王も倒してほしいとは無茶に続く無茶だ。


「どう考えて俺には無理だと思うけど……」


 俺が苦笑いをして言うと、悪魔もまた苦笑いをする。


「そもそもなんで両方倒すなんて話になるんだ?」


 疑問が口から出る。


「……長いので手短にお伝えします」


 悪魔の顔は悲しそうに続けて話す。


「先ほど申し上げたとおり、私は悪魔です。かつては四大悪魔として魔王様の側近としてお仕えしておりました。魔王様もその頃は穏やかな方で人間との和平を考えておられました。歴代最強と呼ばれ、穏やかな性格の魔王様に皆お慕いしておりました。

 しかし、ある日勇者が誕生し、勇者もまた歴代最強とされる実力の持ち主だということがわかりました。その話を聞かれた後、魔王様は日に日に凶悪な性格へと変わっていきました。

 恐怖に耐えられなかったのです。初めて自分を超える程の存在、それも自分を殺害するのを存在意義とする者。この時、今までの魔王様はただ穏やかな性格であったのではなく、魔王様の存在を脅かす程のものがいなかっただけだということを知りました。

 以前は魔王様の下でそれなりの安定が築かれておりましたが、魔王様は勇者への恐怖からか、その行動はどんどん残虐になっていきました。人間と魔族との対立もより激しくなり、大戦争手前という状況になりました。

 その一方で、勇者もまた覚醒を続け、魔王への憎しみもより増していきました。この時、私は魔王と勇者という存在がこの世界の安定を妨げているのを知りました。

 そこで、私は他の四大悪魔を含む同志とともに軍を率いて魔王様に反旗を翻しました。しかし、想像を超えた魔王様の力にとても敵わず、敗北してしまいました。私の予定では、魔王を倒した後は内乱を治め、軍を率いて勇者も倒し、魔王と勇者の生まれない世界を確立するつもりでしたが、その願いは叶いませんでした。

 その後、身を隠し、私は『一対一の術』と呼ばれる術を発動させることに成功しました。この術は異なる世界の者と一人に限り入れ替える術です。そして、この洞窟が転移の場として選ばれ、誰かがくるのを待っていました。

 長かったですよ。誰かが転移の場に入ってくるまで隔絶されるという術ですから。時々山に来るあなたの成長も探索魔法で見てきました。本当に立派に成長された」


 なんてホラーだ。こいつはずっと俺に目を付けていたようだ。


 洞窟に誘い込む日をずっと待ち望み、十分に成長してからおびき寄せただろう。


 うっとりした気持ちの悪い顔でこちらを見たかと思うと、悪魔はまた話しはじめる。


「術者は情報を収集することはできますが、ここから直接出ることはできないのです。

 そして、この禁術の代償として、私の両手及び下半身、寿命、それから私を慕う約10000体の悪魔に同意の儀を行い、供物として捧げることになりましたが……」


 ……とてつもない話だし、よくわからないことが多々あったが、今さらだ。


 ふと悪魔の顔を見ると、悲しい顔をしたような気がするが、気のせいかもしれない。


 表情とは別に悪魔の息づかいは荒くなっている気がする。


 悪魔は隠そうとはしているようだが、苦しそうなのは俺にもわかる。


 悪魔はいきなり力強い誇張になり、続けて話しはじめる。


「本当に時間がなくなってきた!!寿命がもうわずかなのです!!

 この禁術についてですが、私が死んでも魔術の効力は続きます。また、今後勇者と魔王の倒した後にはどちらも次の世代は生まれません。そういった禁術なのです!また、ささやかではありますが、私には二つだけあなたに与えられる能力がありますのでそれを差し上げます」


 やっぱりそうか。ただの俺には到底できるわけがないからな。


 悪魔は少し声が弱弱しくなりながらも話しはじめる。


「一つ目は言語変換能力、今使っているものを自分自身に応用する能力で、ようはジュメールの言葉がわかり、あなたも話せる。そして、読み書きもできるようになるというものです。

 二つ目は『狂気の鎌』と呼ばれる能力で、能力者の精神力に反応し鎌の形をした魔具を生み出し使用できるとされております。しかし、それは紫色の濃い状態、つまり基準値を維持できた場合です。大きくすればするほど色は薄くなり、脆くなり、小さくすれば小さくするほど色は濃くなり、強固になります。

 あなたの精神力に基づき、使える基準値となる大きさは違ってきます。古来より災いとされてきた能力で、私が使わず体内に留めておいた能力です。そのため、私自身どういうものか分かっておらず、伝承による知識のみでしかわからない危険なものです。

 しかし、今これ以外に与えられる能力は私にはありません。適性次第ですが、あなたならあるいは……」


 あるいは……って、さっきの魔王との戦いといい、本当に一か八かの奴だな。


 この悪魔、意外にダメな子なのかもしれない。それにその『狂気の鎌』とやらを使って俺の体は大丈夫なんだろうな。


 そこらへんもダメな子じゃないよな?


「あっ、本当に時間がなくなってきた。能力移転と転移をはじめます」

「えっ!!うそうそ!!」


 いきなりすぎる。まだ聞きたいことが山ほどあるのに!!


 体の中に何かが入っていく感覚があったかと思うと、俺の下に黒い渦ができ両足を飲み込んでいく。


「あと、戻ってきた際、時間は転移直後ですから安心してください。」


 嬉しい情報だがもっと色々聞かせてほしい!!


「……もし『オリエンス』という者に会えば自由に生きるようお伝えください。」

「待てって!!」


 叫ぶもむなしく俺の下半身は黒い渦に飲み込まれていき、ジタバタしても全く抵抗できない。


 さらに、寝落ちするように意識を失っていく。


「……紫なる光は全てを飲み干し、狂気は新なる大器を生むだろう。私は女神…そう今や女神となった!!……フフフ」


 私が最後に見えたのは、悪魔の上半身がまるで眠りに着くように横たわる姿。


 最後に聞こえたのは悪魔の奇妙な笑い声だった。



お読みいただきありがとうございます!

この度はじめて小説を書くことにしました。

どんな評価でも、コメントでも嬉しいので何卒いただければありがたいです

m(_ _)m

完結できるよう頑張ります!

これからもよろしくお願いします!

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