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最強の殺し屋だった私が聖女に転生したので世界平和のために悪を粛清することにしました  作者: 結月 香
第六章 教団との戦い

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零:不穏の足音

 婚約式を無事に終えた翌日、事件は起きた。


 その時、私は神殿にいた。皇太子との婚約を祝う民衆がひっきりなしに訪れるので、大聖堂の祭壇の前でニコニコしながら手を振っていた。


 そこへ、トリスタンが珍しく取り乱した様子で大聖堂に入って来た。


「聖女様!」


 黒髪に黄金の瞳の青年神官は、パタパタと駆けてきて私に耳打ちした。


「大変です! リュカとクラリスが倒れたと……!」

「倒れた?」


 一瞬、過労かと思ったが、それならばトリスタンがここまで動揺するはずはない。

 私はすぐに民衆へ一礼して、彼と共にその場を後にした。


 二人は神殿内に設えられている医務室に運び込まれたと聞き、そこへ向かうと、神官長のジャンと大神官のアネットが先に到着していた。

 二人はそれぞれリュカとクラリスが寝かされた二つのベッドの脇に立っている。


「アリス様、これを……」


 アネットが指を指したのはクラリスの首元だった。

 そこには、先日私が首に着けられた聖女封じの首環と同じ形のものが着けられていた。


「これは……!」


 リュカにも同じものが着けられている。

 しかし、私に着けられたものは中央の宝石が黒だったのに対し、二人に着けられているのは濃い紫色だ。


「二人はどういう状況でこうなったの?」

「穢れの報告を受けて、帝都の南にある町へ向かわせたのですが、その道中で賊に襲われたとの事です」

「神官見習いも同行していたんじゃないの?」

「ええ。同行していたケイドとリーゼルの話では、賊は突然現れ、魔術で自分達を拘束し、リュカとクラリスに首環を嵌めて去っていったという事です……首環を嵌められた直後、二人は失神してしまったので、何とか馬に乗せて戻って来たそうです」

「……つまり、最初から目的は神官だったという訳ね」


 物取りが目的ならば、神官見習いであるケイドとリーゼルも気絶させて所持品を奪うはずだ。

 もしくはケイドとリーゼルに首環を嵌めて、神官二人を脅迫するか。

 しかしそのどちらでもなく、迷わず神官に首環を嵌め、その後何もせずに逃走したのだとしたら、目的は神官の無力化だ。


 私の時は首環の宝石を壊せば魔力封じは解かれたが、今回はどうだろう。


「……オロチ」


 名を呼んだ刹那、私の背後に禍々しい魔力の気配が顕現する。


「此処に」


 黒髪に血を吸ったような緋色の瞳の美青年というなりをしているオロチだが、ジャンとアネットとトリスタンは彼を見てひっと息を呑んだ。


 オロチは魔物だ。私の眷属になっている以上人間に危害を加えはしないが、ジャンとアネット程の魔術師ならば彼の正体にすぐに気付くだろう。


「あ、アリス様! か、彼は一体……!」

「私の眷属なの。グレース・ノア様からの遺産ってところかしら」


 そう答えたところでオロチを見ると、彼は自分が呼ばれた意図を察した様子で、リュカとクラリスを観察していた。


「先日アリス様に着けられたものと似ていますが、込められた術式が異なりますね。これには、着けた者を昏睡させる魔術が込められています」

「これも宝石を破壊したら目覚めさせられる?」

「その可能性はありますが、確証はありません。解除手順として誤っていれば、爆散するでしょう」


 ぐぬぬ、と唸る。

 今のところ、リュカとクラリスを目覚めさせる手段がない。

 この首環を創り出した人物、または扱い方を知っている人物に尋ねなければ。


 そう思った矢先、私の胸元で何かが光った。

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