表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
最強の殺し屋だった私が聖女に転生したので世界平和のために悪を粛清することにしました  作者: 結月 香
第五章 婚約式とティアラ

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

52/219

弐:サーブ山脈

 身支度を整え、すぐにクロヴィスがティアラの所在を探知した辺りまで、転移魔術で移動した。

 その直後、猛烈な吹雪が私達を襲う。


「っ!」


 寒い。こんな吹雪は生まれて初めてだ。


結界魔術オービチェ!」


 咄嗟に唱えて、私とクロヴィスを魔力の壁で包み込む。

 結界魔術に中を温める機能はないので寒いのは変わらないが、吹雪が消えるだけでだいぶマシになる。


 念のため、結界魔術の上から遮蔽魔術を掛け、相手から私達の気配を察知されないようにしておく。


「なるほど、結界魔術で吹雪を防ぐのか……」

「その分魔力を消費し続ける事になるけど、吹雪の中を進んで体力を消耗する事に比べたら、リスクは低いでしょう?」

「そうだな。疲れたら俺が変わるから、遠慮なく言ってくれ」


 言いながら、クロヴィスは私の手を引いて歩き出した。


 雪深い山道は歩くのも困難だが、結界魔術のおかげで、歩く前に魔力の防壁で雪が掻き分けられていくので、かなり歩きやすかった。


「……この辺?」

「ああ。近いはずだ。この吹雪の中じゃ犯人も身動きが取れないだろうから、山小屋や洞窟で吹雪が止むのを待っていると思うんだが……」

「そうね」


 言いながら辺りを見る。


「あ、洞窟」


 吹雪いていて視界が悪いが、少し向こうに、岩肌にぽっかりと空いた穴が見えた。


「どこだ?」

「あそこよ。ほら、あの木の向こう」

「うん? 見えないが……」


 クロヴィスが目を凝らすが、視認できないらしい。


「……お前、視力も常人以上なのか……」

「人を怪物みたいに言わないでくれる?」


 半眼になってそう答えると、クロヴィスはくすくすと笑った。


「そんな事言ってないだろ……あ、洞窟ってあれか」


 少し近付いてから洞窟を認めたクロヴィスが目を細める。


「……いるな。間違いなく、ティアラを盗んだ犯人だ」

「突撃する?」

「そうだな。さっさと片付けよう」

「じゃあ私が……」


 飛び出そうとした私の腕を、クロヴィスがやんわり掴む。


「たまには俺にも活躍の場を譲ってくれ」


 言うや、クロヴィスは自身に遮蔽魔術を掛け、結界から飛び出した。

 慌てて私は後を追う。


 洞窟というよりは洞穴のようで、ぎりぎりで吹雪が防げる程度の奥行しかないようだが、中で焚き火をしている人物が一人いた。


束縛魔術セルビートス!」


 遮蔽魔術で相手から認識されない状態から、クロヴィスが束縛魔術で相手を拘束する。

 同時に魔力封じも施したので、相手はなす術もなくその場で固まった。


「動くなよ。妙な真似をしたら命の保障はしない」


 クロヴィスが姿を見せると、その人物、褐色の髪にグレーの瞳の青年は愕然と目を瞠った。


「テメェ……!」


 クロヴィスが誰だかわかっている様子だ。その上で「テメェ」呼ばわりとは、命知らずにも程がある。


「ティアラはどこだ?」

「はっ! 誰が渡すもんか!」


 クロヴィスが凄んでも、青年は強気で言い返す。

 それにしてもこの青年、どこかで会ったことがあるような気がする。


 私は、すっと遮蔽魔術を解いてクロヴィスの隣に姿を現した。

 私の姿を見た青年がぱっと表情を明るくする。まるで味方が現れたかのような反応だ。


「アリス……!」


 私を呼び捨てにした青年に、クロヴィスが心底不快そうに眉を顰める。


「知り合いか?」


 いや、と否定しようとした直前、青年が早口に言い放った。


「俺だよ! 俺! シェイド・ティーノだよ! 同じ村に住んでいただろう!」

「シェイド……?」


 その名前は憶えている。

 五年前まで住んでいた村で、私をいつも揶揄からかって虐めて笑っていた年上の少年の名前だ。


 言われて見れば、確かに面影がある。


「……シェイド・ティーノは確かに私と同じ村にいたわね。私より三歳年上だったかしら。いつも虐められて、いい印象はなかったけど」


 そう答えると、クロヴィスも青年に対して冷たい目を向ける。

 青年、シェイドは慌てた様子で言葉を紡いだ。


「お、俺はっ……! 確かに揶揄ったりしたのは悪かったけど、決してアリスを虐めていたつもりはねぇんだ!」

「……カエルや虫を投げられたりしたけどね」


 当時の私は魔術もろくに使えないし、前世の記憶もまだない頃だったからやられたらやられっ放しだった。

 泣いて逃げる私を、シェイドはいつも笑っていた。


「……で、今回も私を困らせたくてティアラを盗んだの?」

「違う! ティアラを盗んだのは、アリスと話がしたくて……」

「話がしたいだけなら、神殿に来れば良かったじゃない。神官に私と同じ村の出身だと言えば取り次いでもらえたのに」


 まぁ、彼の名前を聞いたところでそれに応じたかどうかはわからない。何しろ彼の事は嫌な奴という印象しかないのだ。

 だが、聖女と言う立場上、幼馴染がやってきたら門前払いはできないだろうから、少なからず顔くらいは見せただろう。


 私の言葉に、シェイドは唇を噛んだ。

 その様子を見たクロヴィスが、何か思うように目を細めた。


「……神殿に足を踏み入れられない理由でもあるんだろう。盗賊のようなならず者なら、神殿のような場所には好んで近付かない」


 神官の中には罪人に対して厳しい反応を見せる潔癖な者も多い。そうでなくとも神殿と帝国の皇室は繋がりが深いので、クロヴィスの言う通り、やましい事がある者は神殿に近付かないのが普通だ。


「へぇ。盗賊ね。盗んだティアラは売るつもりだった?」

「だから違うって! 俺はただアリスと話がしたかったんだ! ティアラを盗んで、後で呼び出して返すつもりだったんだ!」

「私と何を話すと言うの? 散々虐めてきたくせに」


 私が半眼になって言い返すと、シェイドはクロヴィスを一瞥して、悔しそうに歯嚙みした。

もしよろしければ、ページ下部のクリック評価や、ブックマーク追加、いいねで応援頂けると励みになります!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ