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最強の殺し屋だった私が聖女に転生したので世界平和のために悪を粛清することにしました  作者: 結月 香
第十五章 鎖国国家の秘密

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零:秘密の取引

 セルボの港を出発してから五日後、私とクロヴィス、オロチとガリューはフルメンサキ王国の沖合にある小さな島に到着した。


 ダルガンから聞き出した島と座標が合っていることを魔術で確認し、約束の時間まで待機する。

 取引は船の上で行われるそうなので、この島が取引の場所であるといっても、上陸はしない。


 時間の指定は日没。

 太陽が西の海に沈む頃、突然目の前に船が顕現した。


 私達が乗っている船よりも遥かに大きな帆船だ。


「……急に現れたわね」


 船尾で気配を絶っている私は、同じく遮蔽魔術を掛けて隣に控えているオロチに囁く。

 遮蔽魔術の効果で、遮蔽魔術を掛けている者の声は外には聞こえにくくなっている。

 それでも、大声を出せば聞こえてしまうので気を付けなければならない。


「おそらく、船自体に遮蔽魔術を掛けていたのでしょう……いつからそこにいたのかわかりませんが、出発時から気配を消していて正解でしたね」


 もしもあの船が、私達が来るより早くそこにいたのだとしたら、私達がこの場に到着してから遮蔽魔術を掛けて気配を絶っても無駄だっただろう。


 と、相手の船首に、黒いローブを纏った人影がゆらりと現れた。

 月明りにぼんやりと浮かび、顔は陰になっていてわからない。

 ローブで体型が隠れているので、一見しただけでは性別も判断できない。


「奴隷を」


 男にしては高く、女にしては低い、中性的な声が静かに響いた。


 船長に扮しているクロヴィスはさっとこちらの船の貨物室を開けた。

 合図を受けた、分身して奴隷に化けたガリューが五体、怯えたふりをしながら出てくる。


「乗れ」


 短い命令に応じるように、大きな船から梯子が降りて来る。

 その位置に合わせて船をぴったりと横につけたところで、一体目のガリューがそれを登り始めた。

 怪しまれないために、ガリューは恐々とした演技をしている。梯子を上るのにも時間を掛けてくれているので、その間に私とオロチは飛翔魔術で船上に先回りした。


 手入れの行き届いた綺麗な船だが、この規模の帆船にしては人の気配がなさすぎる。


 妙な気配を感じつつ、私とオロチはガリューが梯子を上り終えて船に乗るのを待った。

 黒いローブの人物は、奴隷五人が船に乗ったことを確認して、船首から革の袋をクロヴィス目掛けて放り投げた。


 中身はおそらく金塊だろう。

 ダルガンも、支払いはきんだと言っていた。

 フルメンサキは帝国の友好国ではないため、紙幣や貨幣は共通しておらず、両替もできないのだ。

 だが、金塊であれば、それを売ることで帝国内で使えるかねに換えられる。

 

「お前らはそのままそこに居ろ」


 ローブの人物は奴隷に化けているガリューに向けてそう言い、舵の前に移動する。

 たったそれだけの短い距離だったが、その足運びを見て、只者ではないと確信する。手練れだ。相当強い。


 と、その人物は舵にそっと触れた。


 その瞬間、大きな船はゆっくりと動き出した。帆は畳んだままで、風もないのに、だ。


「……きっとこの船自体が魔具なのね」

「そのようです」


 私とオロチはこそこそと会話を交わす。ローブの人物は私達に気付いていないようだ。


 船が波に逆らうように進み、一時間足らずで港らしき場所に停まったのだった。

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